「芸バカ列伝」山下勝利

カバー画 刀根広篤

あとがきに1981年5月とあるから、日本はバブルに向けってまっしぐらな時代、その辺の時代背景も踏まえて読むと熱い?暑い?過ぎ去りし日本を感じられるかも。

文庫概要

タイトル芸バカ列伝
著者山下勝利
出版社旺文社文庫

カバー画 刀根広篤

内容紹介

70年代生まれの自分、知っている人は牧伸二と玉置宏くらいかな。

存命の方はいらっしゃるか? 80年代に活躍となると、パッとwikipediaで見たところ1930年代生まれ多く、そうなると多くは90歳前後という計算になる。

  • ジミー時田<ウエスタン歌手>
  • 白山雅一<歌謡声帯模写>
  • 松平直樹<歌謡コーラス>
  • 山崎唯<ピアノ弾き語り>
  • 内藤陳<ボードビリアン>
  • 灘康次<歌謡漫談>
  • 高英男<シャンソン歌手>
  • 三門博<浪曲>
  • 中野ブラザーズ<タップ・ダンス>
  • 高品格<俳優>
  • 東京コミックショウ<コント>
  • 早野凡平<しゃべりマイム>
  • スマイリー小原<バンドマスター>
  • 東冨士夫<曲芸>
  • 古今亭志ん好<落語>
  • 大江美智子<女剣劇>
  • 牧伸二<ウクレレ漫談>
  • 来宮良子<声優>
  • 玉置宏<司会>
  • 浜村美智子<歌手>
  • Wけんじ<漫才>
  • 小金井芦州<講談>
  • 横森良造<アコーディオン>
  • 林家正楽<紙切り>
  • 関敬六<コメディアン>
  • あとがきに代えて

写真 平地勲

なお著者の山下勝利氏は1939年生まれで、2022年の現在でもご存命のようだ。

内藤陳<ボードビリアン>

今でいう一発芸人の側面もあったようだ。

「ハアドボイルドだど」がウケたのは、まったくの偶然からだ。(略)形はきまっているのに台詞はずっこけた。この落差が客にウケちまった。キャッチフレーズを持つ芸人は強い。客が期待しているものがわかるからだ。

いつもお世話になっているwikipediaによれば

新宿のゴールデン街でバー「深夜プラスワン」(ギャビン・ライアルの作品から頂いた)を経営した。

とのこと。冒険小説やハードボイルド小説の書評家としても一面もあったようだけど「深夜プラスワン」は自分もおすすめ、当サイトでも紹介している。

古今亭志ん好<落語>

落語にしろ、歌舞伎にしろ、ときに現代を生きるのと同じ感覚で聴いて通じる部分と通じにない部分があって、その違いを味わいたい。

「ね、ひとつひとつ細かいこと知ってりゃ、噺だっていっそう面白く聞けるんです。それにね、吉原ってのはだましたり、だまされたりのうちに人情ってのがにじみ出てくるもんで、それがなんともたまらない」

浜村美智子<歌手>

著者の技量もあるのだろうけど、本人もある程度自己を犠牲にして(売り出したいという)セクハラ・ギリギリ案件だったりするのかなと。

そこで浜村美智子の出した条件が「裸になるのは一回だけ。ギャラは一万円」だった。当時、ヌードモデルのギャラは二千円から三千円どまり。破格の要求ともいえる。
(略)男ってのはこういうことになると嗅覚が働くのだ。肩書が歌手ということもあって、とくにショー関係者やレコード会社が浜村美智子に目をつけた。

Wけんじ<漫才>

個人的に一発芸は… あまり好きではない。やる方も、空振りになるようなったら辛いかなとか。

バカうけするギャクを持った芸人は強い。テレビの生放送となると必ずトリをとらされる。(略)時間がどう押してこようと「やんな!」とくれば客はドッと湧く。そこで頭を下げればあとは拍手。客を納得させたところで幕をひけるわけだ。

あとがきに代えて

話のきっかけは、いつものように水割りを三杯ぐらい空にしたときだ。場所は例によって銀座の「美弥」。(略)その夜の話し相手は落語家の立川談志師匠。この店の主のような人だ。この人の「顔」で「美弥」は芸人さんの常連が多い。いきおい話の内容もそのテのものが多くなる。

こちらのお店、今も営業しているかな?とネットで調べてみれば2016年末で閉店したようだ。この店の主のような談志師匠と言われるように、師匠のとまりぎの店だったようですな。そう思うと、知らない芸人が多くても、急に身近に感じられた。

芸人は聴衆がいる空気のテンションを上げるためにも、自らのテンション上げるだけに、読んでるこちらにもドライブかかりそうな気がしたわ。

この1冊でした(Amazon)

Amazonでは古書として何冊か取り扱いもあるようですが、もう著者は過去の人のようですかな。