「明治の人物誌」星新一


常々読んでみたいと思っていた作家だが、これから読み始めてみた。

文庫概要

タイトル明治の人物誌
著者星新一
出版社新潮文庫

カバー装画 真鍋博

内容紹介

紹介されている人物のラインナップは下記の通りだが、このセレクションの所以は… と思っていると、父・星一と縁の方々とのことだった。

父というのは、知る人は知っている星製薬の創業者です。それだけに、著者はさぞかしお坊ちゃん育ちに違いない、と思い込んでいたものの、確かにお坊ちゃん育ちではあるが、父の死後に経営を継いでなかなかにご苦労もされていた。

  • 中村正直
  • 野口英世
  • 岩下清周
  • 伊藤博文
  • 新渡戸稲造
  • エジソン
  • 後藤猛太郎
  • 花井卓蔵
  • 後藤新平
  • 杉山茂丸

読んでいて興味深かったのは、明治に活躍される事業家は決して己の欲だけでなく、社会を良くしよう!という思いが非常に強かったようで、それだけに絶好調と絶不調の幅が広い。インサイダーど真ん中のようなブラックな取引も少なくないが、一言で総括してしまえば、良くも悪くも事業欲に満ちて、もはや善悪を超越している感じ。ほぼほぼ満たされている、やや閉塞的な環境で生きる身には読んでいて心地よかったかな。

エジソンや(特に)野口英世は非常に身近に感じられた。後者などは、子供が読む伝記と大人が読む伝記のギャップが大きくて、氏のようには生きられないけど、いかにも明治時代の偉人という具合。

なお、カバー装画の真鍋博氏も、他の文庫本でもお見かけする名前だなと思ってネット検索すると(いつも便利な)wikipediaに記載があり、星新一や筒井康隆の著作に作品を寄せているようだった。多作な作家だから、どうやってアプローチしていこうかな? 悩む。

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