荻昌弘氏と昭和の通人が語る普通の味の醍醐味

グラシン紙かけて愛おしい旺文社文庫っす。いつの時代でも、どこの国でも、食べ物の話って読んでて食欲を掻き立てられるのですが、こちらはそれと同時に、登場される方々への興味も募る。

本のタイトル快食会談
著者名荻昌弘
出版社旺文社文庫
この写真にちなんで、こちらの文庫を紹介したい。

特別でない普通の料理を美味しく食べる

対談の相手と語りの対象となった料理は次のとおり。

  • 雑煮|楠本憲吉
  • ホルモン焼き|開高健
  • おでん|加太こうじ
  • タイ(鯛)|末広恭雄
  • コロッケ|安岡章太郎
  • すし|石毛直道
  • カレー|辻静雄
  • そば|邱永漢
  • どんぶり|飯沢匡
  • 石狩鍋|おおば比呂司
  • おふくろの味|田辺聖子
  • すきやき|池波正太郎

知っている方もいるし知らない方もいるので、便利なwikipediaで調べてみると、やはりその分野での第一人者が多い。

そもそも、著者の荻氏自身、私の意識になかったが、経歴を見てみれば、むかしテレビで目にしたこともある方に違いない。登場した多くの方が荻氏と同世代で、自分が子供から大人へ成長する過程で活躍した人たちなので、今となっては故人が生き生きと語っているのを読むのが妙に新鮮だったりする。

  • 荻昌弘(1925~1988)映画評論家、料理研究家。家はもともと裕福。
  • 楠本憲吉(1921~1988)俳人、随筆家。実家は料亭・なだ万。
  • 開高健(1930~1989)小説家。
  • 加太こうじ(1918~1998)評論家。貧困家庭に生まれる、名門の加太家の血筋を誇る父に反発。
  • 末広恭雄(1904~1988)水産学者・随筆家・作曲家。東京大学学生歌『足音を高めよ』を作曲。
  • 安岡章太郎(1920~2013)小説家。
  • 石毛直道(1937~)文化人類学者・民俗学者。
  • 辻静雄(1933~1993)辻調グループの創設者。
  • 邱永漢(1924~2012)日本および台湾の実業家、作家、経済評論家、経営コンサルタント。
  • 飯沢匡(1909~1994)劇作家、演出家、小説家。
  • おおば比呂司(1921~1988)漫画家、デザイナー。
  • 田辺聖子(1928~2019)小説家。
  • 池波正太郎(1923~1909)小説家。

テーマの献立について語るという主旨から、少々くどい(理屈っぽい)かなと感じる部分もあるのですが、次のようなエッセイぽい発言を読むと、自分の場合は益々色々楽しくなる。

カレー|辻静雄

辻 (略)勿論、本来的には習い事というのは、芸事でも同じですけれども、いいものを先に習った方がいいですよ。えらい先生にいい話を聞いて、骨董品でも本物だけ見てね。そうすればあとで偽物を見てもすぐわかる。この図式のほうが形としては確かです。

自分は表紙を描いたおおば氏を存じてなかったが、氏が描いた焼き鳥缶の絵は知っている。今になってみれば、そーかそーか、この方だったのかと。