「山の音」川端康成

カバー 山野辺進

日本初のノーベル文学賞作家、命日1972年4月16日だけに、この時期ふと思い出しまする。

文庫概要

タイトル山の音
著者川端康成
出版社旺文社文庫

カバー 山野辺進

内容紹介

2作品が収録されていたが、ここではタイトルになっている前者をば。

  • 山の音
  • 末期の眼

「山の音」では昨今の妙に長く凝ったタイトルと異なり、下記のシンプル&ポエティックなタイトルが並び(我ながら)集中して読めた。作品の評価はともかく(そういうこと語れる資格もなく)純粋に好きなタイプの作品なんだと思う。どこかで「敗戦日本人の哀しみ」を描いた作品として

  • 川端康成「山の音」
  • 林芙美子「浮雲」
  • 横光利一「夜の靴」

が挙げられているのを読み、そんな先入観も持ちながら読んでしまった。この観点で言えば、著者をモデルとしている主人公(舅)の息子(嫁の夫)を中心に話が進むという解釈もできるのかなと。

  • 山の音
  • 蝉の羽
  • 雲の炎
  • 栗の実
  • 栗の実続篇
  • 鳥の夢
  • 冬の桜
  • 朝の水
  • 夜の声
  • 春の鐘

最初の単行本への収録の後、昭和27年以降に書き加えたらしい。それだけに、著者の強い思い入れを感じる。

  • 鳥の家
  • 都の苑
  • 傷の後
  • 雨の中
  • 蚊の群
  • 蛇の卵
  • 秋の魚

栗の実

プラトニックラブ(多分この物語のテーマではない)が続くが、舅(信吾)が嫁(菊子)の気持ちを先読みするのも少し怖いが、菊子の気持ちより、その先にある息子との関係を危ぶんでいると読み解きたい。それにしても、もはやこのような同居も少ないだろうから、こういう家族生活(人間関係)もあり得ないなと。

それにしても、あのような大木が、時ならぬ芽を出しているのを知らずに過ごすのは、なにか菊子の心に空白があるようで、信吾は気になった。

雨の中

それでいて、こういう思いが頭にこもるって、舅さんもまだまだ現役である。否、この思いは息子へ向かっているのである。

しかし、なにかいまわしい頽廃と背徳の臭いが、信吾の頭にこもるようだ。

いかん、この小説はそういう?小説ではないのである。

この1冊でした(Amazon)

多くの出版社から発売されているけど、ここはやっぱり新潮文庫で。