ブコウスキー「パルプ」冴えない人物の愛車にはビートル?

カッコいいのはパルプ小説の主人公には不似合いかも

カブト虫と言われる自動車はこちら。

子供のころ、非常にわかりやすいこの車にときめいていたけど、自分で運転することはもう叶わないかな。

本のタイトルパルプ
著者名チャールズ・ブコウスキー
訳者名柴田元幸
出版社ちくま文庫
この写真にちなんで、こちらの文庫を紹介したい。

パルプと言えば「パルプ・フィクション」かもだけど

ちょと気になって訳者もさまざま&立て続けにブコウスキーを読んでいたけど、ついにいよいよ柴田元幸先生!の訳となって、ブコウスキーもエッジの効いたアメリカン作家という扱いになったのかな… とか嬉しく思ってしまった。

探偵ニック・ビレーンの話で、とりとめのない依頼をどう解決してゆくかという、いかにもパルプっぽいストーリー。余計なお世話にも結末を心配させるような展開なのである。まあ、この場当たり的な感じがいいのである。

一応、長さは様々に52章で構成されている。

主人公は「時間6ドル」で探偵仕事を引き受けているのだが、とうぜん依頼者は高いと思っていない。安さのせいではないが、顧客満足度の高い仕事をしているわけでもないのに、次から次へと依頼も舞い込む。それでも、話の流れは擬人的要素多めに

でも飲んだくれてると、ひとつだけいいのは、絶対に便秘しないことだ。ときどき肝臓のことも考えるけど、肝臓の方からはっきり言ってきたことはない。「やめろ、俺を殺す気か、そんならこっちもお前を殺すぞ!」なんて言ったりはしてこない。人間の肝臓が喋れたら、禁酒会なんて要らなくなるだろう。

すでに何冊かブコウスキーを読んでいるから、彼の筆運びには慣れている。

ニックの語りが多く、客観的に主人公を描写する場面は少ないのだけど、ワーゲンビートルは冴えない人物の愛車にうってつけなのか?

俺はすばやくカブト虫に乗りこんだ。キキーッと音を立てて発進した。爺さんはのろのろと立ち上がってるところだ。

そして、冴えないのに意外と人気がある。

「いいわ、勘弁したげる。で、あたしたちは地球に派遣された偵察部隊なのよ。それでね、あんたたち地球人に何人か、あたしたちの計画に加わってもらいたいわけ。たとえば、あんたとか」
「なんで俺なんだ?」
「あんたは完璧なタイプなのよ。なんでもすぐ真にうけるし、自分さえよけりゃいいと思ってるし、品性とか全然ないし」

読者(自分のこと)が心配するほどではないけど、やっぱり結末は尻切れとんぼっぽい物足りなさもありつつ、主人公&著者は「物事こんなふうに起こるはずはない」と言って、もう一度言って終わる。

物事こんなふうに起こるはずはない、と俺はもう一度思った。

この無理くり感がやっぱりパルプ小説の王道だなと。

最後に、訳者・柴田先生のお言葉。

安手の素材を洗練された作品に昇華させた『パルプ・フィクション』とは対照的に、こちらは安手の素材をあくまで安手のまま再現している感がある。

実はこの「パルプ」はブコウスキー最後の作品で、彼は間も無くこの世を去るのだが、全体的に哀愁&厭世感があるのは(先生も指摘しているけど)自身の余命を感じていたのかなと。

本書の『パルプ』が、ひたすら無節操、無目的に、ただただ楽しく消費されますように。

この1冊でした

パルプ (ちくま文庫)

 

パルプ (ちくま文庫)