「ロック・ワグラム」サローヤン

サローヤン作品全体を俯瞰して読むと味わい深いのに…

David Hockney "PANAMA HAT" 1972
David Hockney "PANAMA HAT" 1972

先に読了した「ワン デイ イン ニューヨーク」に続く、サローヤン2作目だったのだが、最初の読み始めはちょっと自分には読みにくく、作品世界に入りにくかった。

文庫概要

タイトルロック・ワグラム
著者W・サローヤン
訳者内藤誠
出版社新潮文庫
この写真にちなんで、こちらの文庫を紹介したい。

何気に表紙に新潮文庫のこだわりが…

David Hockney “PANAMA HAT” 1972
Hard-ground etching and aquatint(写真提供・西村画廊)

内容紹介

読了してみると、先の作品同様に著者の実生活が色濃く反映されているらしいことがわかった。先に発表されたこれを読んでから「ワン デイ イン ニューヨーク」を読めば、わかりやすかったけど、自分同様に新潮文庫の順番?で読んでもそれなりに味わえるものはあったかなと。大きく三章で構成、多少回想を含めながら時間軸も動くのでちょっぴり混乱する。

  • 第一章 父

冒頭、ちょぴっとポエティックな総括から始まるのだが、このフォントを変えての神視点からの総括が… 個人的には分かりにくかった。が、人によってはこの構成がクールに感じるかなとも思った。

男はみんな、わるい世界に住む善人だ。誰も世界を変えてなんかいない。みんな、自分で一生かけて、善から悪、あるいは悪から善へと、行きつもりつしたあげくに死んでいく。(略)
 しかし男には意味がある。あらゆる男が生きている人生というものの意味だ。それは秘密の意味であり、芸術という嘘がなければ、男は哀しすぎる。

主人公であるロック・ワグラムとその父を始め、父息子の関係を息子の立場から語る感じ。結末がわかって読むと、もっと著者の世界観がわかるのかと(読了して)感じた。

  • 第二章 母

冒頭は第一章同様に、本文と異なるフォントで綴られる総括から始まる。

男には意味がある。あらゆる男が生きている人生には意味がある。それは秘密な意味である。
(略)
 男が家を建てると何かがウィンクする。男が奥さんを見つけると何かがウィンクする。男と奥さんに息子がさずかると何かがウィンクする。
(略)

この章が(残念にも)自分にとっては読みにくかったが、全てを読み終えてみると、ちょっと位置づけがわかってくる。著者的には、自分と母親そして自分の子供の母親(つまり自分の妻)などについて語っている。

  • 第三章 息子と娘

そして最終章も冒頭は同様の総括から始まり、結構前向きだった第一章から時間の経過に伴い、主人公ロックもネガティブで眠れない中年になっている。

何が起るのか? どういうことになるんだ? 三十三だった男は、いま四十一になっていて、西暦はもう一九四十二年ではなくて一九五〇年だ。(略)
 男は彼の父親よりも長く生きている。
 男には六歳の息子がいるのだが、ヘイグという名まえは男が九歳のときに死んだ弟からとったものだ。
 三歳の娘は男の母親の母親からとってルーラと名づけた。
 男は妻と離婚した。(略)

冒頭の総括は、映画のナレーションよろしく状況説明的になり第三章は読み易く感じたという始末。

本文でも、中年男性の苦労が滲み出て、もはや先に読んだ「ワン デイ イン ニューヨーク」に被ってくる。だけど、ここで主人公のロックは俳優で「ワン デイ …」は作家・脚本家ということで同じ業界でも立場が異なる。

その一つ一つは大したことじゃなくても、数重なると大変なのだ。それはウィンクしながら重なっていく。そして男は夜、眠れないので、午後ちょっと眠れやしないかと目を閉じたりして、ほほ笑む。(略)ウィンクとウィンクの重複で何が何だかさっぱり見当がつかないのだ。

以下の4作品が新潮文庫のラインナップだけど、後者2作を読んだことになる。

今回の作品を読んだことで、前者2作も内容が推測できてくるが… 自分の好みを言わせてもらうと、著者の生きざまを語ると同時に、もう少しアメリカ社会の様子(俳優や舞台、テレビ関係だから芸能業界になるのかな)も描いてもらうと作品世界に入りこめたかなと。主人公の主観的な語りが多かったかも。

  • ママ・アイ ラブ ユー
  • パパ・ユーア クレイジー
  • ワン デイ イン ニューヨーク
  • ロック・ワグラム

この1冊でした(Amazon)

この作品の再訳や再販はないかな。