忍者と聞けば「ハットリくん」を思い出す程度で、関心は乏しかったものの、忍者が登場する小説として池波正太郎「真田太平記」と万城目学「とっぴんぱらりの風太郎」を思い出す。両者は大河系な小説で、後者は好きで再読までしている。
文庫概要
タイトル | 忍びの国 |
著者 | 和田竜 |
出版社 | 新潮文庫 |
カバー装画 山口晃
日本画家山口氏による表紙であった!
内容紹介
350ページほどの分量で、読了してみるとわかりやすく起承転結的な構成になっていたかと思う。それだけに、非常にわかりやすかった。
- 第一章
- 第二章
- 第三章
- 第四章
- 終章
で、改めて思い出したのは、忍者は超人的な身体性以外にも(かなり)残酷な側面も併せもっていたこと。
第二章
何の予備知識もなく読み始めたので、この小説がどういう方向?にむかって進んでいくのか不明であった。で、起承転結の承に当たる部分で、この記述を読んだとき、「あ!これは伏線かな」と思った。
平兵衛は、伊賀国内ならずとも生真面目すぎる変人であったかも知れない。こんな性格の者の通弊として、極端へと走った。弟次郎兵衛の死に対する実父の反応に端を発した伊賀者への憎悪は、伊賀者を根絶やしにするという行動へと突き進んでいった。
こんな読み方して、よいものか。
だが本来、忍びの術とはこういうものであった。何も跳んだり撥ねたりが忍術の本質ではない。肉体を使って働くのは無門ら下人の役目である。下人を追い使う三太夫ら地侍は、知恵を巡らし策謀を練った。術をかける相手の「心」を読み解き、その「心」につけ込むことで勝ちを得る。忍びの術の真価はそこにあった。
第四章
忍者とは刹那な生き方だから、なかなかハッピーエンドにならないけれど、そんな中にも可能性を残してくれて小説が膨らむかなと。
自らの身に降りかからねば、他人の不幸が理解できない者がいる。他人がどれほど苦しんでいるのかと、思いもかけない者がいる。
無門という馬鹿忍者がそれであった。
自分でも気付いていないが、この馬鹿忍者にとってお国を想うことは、この男がまともな人間になる唯一の手がかりであった。無門がさんざん悩まされながらもこの女にこだわったのは、このためである。