「源氏物語・1」田辺聖子


歴史を感じながら京都を感じたい

10年以上前になるかと思ったけど、2009年1月の京都でした。天気も悪く(暗く)寒かったのが、記憶に残ってますが、よく見ると京都タワーまで写ってます。

来年は久しぶりに京都に行きたい!源氏物語の世界も知りたいという!と(自分に)期待してます。

この写真にちなんで、こちらを紹介したい。
源氏物語(上)田辺聖子新潮文庫

おせいどん訳でキーパーソンを把握

「教養」とか言うと嫌味な感じですが、日本人として知っていたらカッコいい?と打算もありますが、それ以上にただただ源氏の世界を知りたい気持ちが強いです。高校時代に古典で少し触れたものの、自分は理系だったので深く接する機会は得られず。結構古典好きだったのに(残念)。

源氏物語のアイディアは、能や日本画などにも散りばめられているので、知っていればより一層楽しめそうです。

なお田辺訳は、全体の構成は原典の巻序を踏襲しているが、読み始めは(本人曰く)「光源氏を颯爽とした恋の狩人として登場させたかった」ため、空蝉から始めたようです。初心者、細かいことは気にせず、専門家の工夫に従います。

なお原典の巻序列(全54帖)で、上巻に含まれているのはこちらまで。タイトルはだいたい、地名だったりそこに住む女性の名称だったりするけど、言葉が大和言葉?らしくて響が良い。

  • 第01帖 桐壺(きりつぼ)ー略ー
  • 第02帖 帚木(ははきぎ)ー略ー
  • 第03帖 空蝉(うつせみ)
  • 第04帖 夕顔(ゆうがお)
  • 第05帖 若紫(わかむらさき)
  • 第06帖 末摘花(すえつむはな)
  • 第07帖 紅葉賀(もみじのが)
  • 第08帖 花宴(はなのえん)
  • 第09帖 葵(あおい)
  • 第10帖 賢木(さかき)
  • 第11帖 花散里(はなちるさと)
  • 第12帖 須磨(すま)
  • 第13帖 明石(あかし)
  • 第14帖 澪標(みおつくし)

まず源氏の立ち位置ですが、彼は天皇の息子でありながら、母親の実家の後援がないことにより、皇太子にするのではなく、ブレーンの立場におこうと父親に処遇されます。

皇族とは名ばかりで、後盾も支持者もない不安定な人生よりは、むしろ臣下に降して朝政に参与させた方が、将来の運も開け、才能も発揮できるであると判断されたのであった。

そして源氏は言う。

女は、心がやわらかで素直なのがいいんだよ

それは「男もだ」と思う。そしてざっくり総括すると、万事この調子で恋愛絵巻が繰り広げられます。

ところどころの状況描写で

声のよい者をえらんでおいている僧たちの、暁がたの念仏の声などは、耐えられぬまで切なく聞かれた。

以前、自分も宿坊に泊まったことがあり、朝方聞こえてきたリズムの揃った読経は、ロックだと思った。ドラム系(木魚や太鼓)も盛り上げてくれます。

そして、この絵巻の読みどころの一つである、怨念…

御息所の生霊が、葵の上の命を縮めたということは、源氏のひそかな確信になっている。

御息所(みやすんどころ)とは、「天皇の休息所」と言う意味で、天皇の寵愛を受けた女子のことを指している(らしい)。「葵の上」は源氏の妻です。

ジェラシーに共感を得られないと、この絵巻は楽しめません。

源氏は都へ戻って、昔以上の権勢を手にしてからも、流浪時代つらくあたった人々に、仕返しをすることなど、絶えてなかった。
人は、その時々のなりゆきに任せて生きなければしかたのない、弱い存在なのだ。

昔の人は、無常を知っています。

そして、母娘に手を出したい?源氏に対して、母は自分の辛さ(ジェラシー)から、源氏に「娘には手を出してくれるな」と訴えます…が!

「(前略)またしても女同士の恨みそねみの渦にまきこまれましょう。わたくしは、姫だけはあの辛さを味わわ(ママ)せとうございません。嫉妬したり恨んだり、呪ったり、身も世もなく恋い焦れ、恋の手だれの男に弄ばれて傷ついたり……そういう地獄お憂きめにあわせたくないのでございます。あの姫には、安らかで幸わせな女の一生を用意してやりとうございますのよ」

と、物語は続きます。今回は、ひとまずここまでで。

そうそう、「はいからさんが通る」の大和和紀女史による「あさきゆめみし」も読み直したくなりますね。

この1冊でした

新源氏物語(上) (新潮文庫)

 

新源氏物語(上) (新潮文庫)

  • 作者:田辺 聖子
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1984/05
  • メディア: 文庫