モームの短編「雨」熱帯地の雨は人間の理性を狂わせる

サマセット・モーム作品、そのむかし「月と6ペンス」を読んだことがある。わかりやすいタイトルと、そこから内容が想像できないギャップに魅力を感じ、他の作品も読んでみたいと常々思っていたので、何冊か積んである。まずは軽めのこちらを読んでみたが…

本のタイトル雨・赤毛
著者名S・モーム
訳者中野好夫
出版社新潮文庫
この写真にちなんで、こちらの文庫を紹介したい。

この作品の雨は熱帯地での雨、人間の理性をまで狂わすものだけど、今年2020年の日本の梅雨もなかなか粘り腰の雨っぷりで、自分の気圧がまったく上がってこない。

「赤毛」が秀逸だった

3作品、解説でも絶賛されていた。「雨」もよかったけど、自分は断然「赤毛」、人生における異性との関わりについて、少しいろいろ考えさせられた。最後の最後まで、畳み掛けるような旺盛な皮肉がモームらしいのかなと。

  • 赤毛
  • ホノルル

熱帯地での雨は、やがて規律に富む人物の理性を狂わせ、快楽的な女性の精神の勝利!な内容、気候と人間の精神性をうまくシンクロさせていると小説の醍醐味を感じさせられた。

赤毛

この作品は赤毛のイケメン「レッド」と呼ばれた男性と、生涯彼を愛し続ける女性のお話。結末はいかに?

狂言回しと思われる第三者が登場し、その彼が意味深長な発言をする。

二十五といやあ、馬鹿な、芝居じみた感傷的な年頃だからねえ。だが、俺は思うんだが、それでこそ人間五十になって賢くなるんじゃないかな?

レッドと彼を愛した女性も五十近い年齢になって、何を思うのか? 私ごとですが、自分もそろそろ五十、少しは賢くなっているのだろうか。

狂言回しの第三者は、レッドと彼を愛した女性が暮らしたこの土地を神格化する。この通りすがりの第三者は、それに魅了されこの土地に居ついてしまう。

俺にはどうもそう思えるんだが、人間が恋愛をしたり、悩んだりした場所というものは、決して消えることのない、かすかな香りのようなものがいつまでもまつわっているような気がするんだ。多分そういった場所というものは何か神秘な霊の力を獲てそれが通りすがりの人間の心にまで触れてくるんだろうと思う。

この第三者、レッドの行方は知らない。しかし、突然姿をくらましたレッドを愛し続ける女性の近くにいて、もはや狂ったようにレッドを思い続ける女性の観察を続ける。

激しくはあるが、ひどく移ろい易い感情の持主である土地のものたちの中に、こうしたいつまでも思いつめた恋のできる女がいようとは誰しも考えなかっただろう。

唐突ですが、読了後、もうじき五十になる自分は、老いても精神的には若々しく生きたい… と憧れてみたりする。

他のモーム作品も楽しみだ。

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