「私の東京地図」佐多稲子


著書が住んだ昭和初期の東京

小説の舞台は上野、日本橋界隈から神楽坂や高田馬場へ移ってくるが、今の東京はどこも同じように(私には)見えてしまう。

梅雨のはじめの神楽坂。指圧や箏曲の先生宅のようですが、むかしの花街に似合いそうな雰囲気かなと。

この写真にちなんで、こちらを紹介したい。
私の東京地図佐多稲子

佐多稲子という人

1904年生まれで1998年に亡くなった女性の小説家、子供の頃から苦労人でありながら、それだけに世の中を客観視して文を書きたくなる方のようです。けして面白い類の小説ではないものの、結構機微なところを見逃さずに書いているところが怖い。

奉公先の親子関係が入り乱れている(誰が実の父で母で子で…みたいな)のを踏まえ

こだわりのない淡白さで、あるがままのことはすらりとのみ込んで、そのようにお互いに立ち合い、ゆずり合っているので、過ぎたいきさつは誰の口にもあらわにされないのである。

と言い切る。要するに「誰と誰が恋仲になって子供が生まれて別れても、誰も他人事として触れないし干渉しない」と結構いくつかの場面で言い切っている。

きっと現在の人間関係と比較すれば、ある意味、現在以上に共存が重要視されるだけに、行き詰ることがないよう他人のことに干渉せず、その反面、現在以上にみんな積極的に人と関わって行ったんだろうなと。

この1冊でした

私の東京地図 (講談社文芸文庫)

 

私の東京地図 (講談社文芸文庫)