「心霊殺人事件」坂口安吾

波止場のコンテナ作業は見てて飽きない?

「桜の森の満開の下」も好きな世界と思っていたけど

本格的に推理小説も手掛けていたことは知らなかった。

本のタイトル心霊殺人事件
著者名坂口安吾
出版社河出文庫
この写真にちなんで、こちらの文庫を紹介したい。

ネタばれしない程度に、タイトル作品の事件を解く鍵は大きな荷物!ということで、このヘッダー画像をば選んでみた。

短編で一気に読ませる

参考まで発表された時期も明記しておこうかと。

  • 投手殺人事件(1950年4月号、7月号)
  • 屋根裏の犯人(1953年1月号)
  • 南京虫殺人事件(1953年4月号)
  • 選挙殺人事件(1953年6月号) 巨勢博士
  • 山の神殺人(1953年8月号)
  • 正午の殺人(1953年8月号) 巨勢博士
  • 影のない犯人(1953年9月号) ※現場は旅館
  • 心霊殺人事件(1954年10月号) ※現場は旅館・伊勢崎九太夫
  • 能面の秘密(1955年2月号) ※現場は旅館・伊勢崎九太夫
  • アンゴウ(1948年5月号)

フォーマットは、警察、新聞記者、博士や奇術師(伊勢崎九太夫)を狂言回しとして語らせるタイプだった。正直、最初はなかなか安吾ワールドに入り込めずにいたけど、途中から人間のダークな部分が出て来て楽しく読めた。

現場が旅館なのも、自身が旅館生活をしていたせいもあるのかな?

影のない犯人(1953年9月号)

武道をたしなんでいた70歳になるお爺さん、暗い世情で陰気になっていたところ、急に覇気が出て、17~18歳の青年のようになったところに、事件との関連を匂わせる。

敗戦とともに、それまで一日たりとも休んだことのない竹刀を振りまわすのをやめたために、精気が陰にこもって内から発するに至ったのかも知れない。七十にして一七八のチゴサンへの若返り。ああ、奇蹟なるかな、奇蹟なるかな。

こういう細かい人間心理が、また読ませてくれる。

心霊殺人事件(1954年10月号)

文庫本表紙は「能面の秘密」を踏まえているようだけど、文庫本タイトルにもなっているこの作品が一番面白く感じた。

当初は結構依頼者でもある一族(4兄妹)を、品が悪いと軽く罵倒気味なのに…

眼前の姉妹にしても天性の美貌となにがしの気品、虫も殺さぬような優雅な風であるけれども、その性根の程はどんなものだか。勝美の言葉は落ちつきがあって物静かではあるが、語られている内容は甚だ異常で非人情なものではないか。

途中からは、その軽薄な割に真剣な様に著者自らが愛着を覚えるというから、読んでいる方も興が乗ってくる。

さて、その翌朝だ。オハヨー、奇術師サンと云って糸子がやってきた。
「ゆうべはウンザリして逃げたんですか」
「イエ、とんでもない。むしろあなたの一族にはじめて好意をもったのですよ。あなた方四人の兄妹にね」

すっかり4兄妹のダークな人間性に誤誘導しておきつつ、秘密は大きな荷物にある。

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