「月山・鳥海山」森敦

渋い1冊を読んだ。以前から気になっていたけど、どれくらい積んでいただろうか。

何に気になっていたかと言えば、学生時代に夏スキーで月山合宿をしたことがあり、夏でもスキーができる山としてシンプルな名前とともに思い出のある山であったから。加えて、鳥海山のタイトルと共に、ここから酒田への興味も広がった原点でもあったから。

文庫概要

表紙:司修

表紙のフクロウは、作品の内容とは関係なさそうだけど、「司修」さんというお名前は自分の記憶のどこかに残っている。自分はどこで、この方のお名前と遭遇したのだろう?

本のタイトル月山・鳥海山
著者森敦
出版社文春文庫
この写真にちなんで、こちらの文庫を紹介したい。

内容紹介

下記のような構成。

  • 月山
      + 月山
      + 天沼
  • 鳥海山
      + 初真桑
      + 鷗
      + 光陰
      + かての花
      + 天上の眺め
  • 解説 小島信夫

月山

著者文体の癖なのか読みにくい部分もあったけど、閉ざされた空間(山間の村)での人間関係と栄枯盛衰などで読ませてくれた。自分は人間模様を描く作品は好きで、富山の薬売りと思われる人が何度か登場する。

富山は、洋服にネクタイになったいまも、むかしながらの行李を背負い、部落部落(むらむら)に仮の宿をして来るとはいうものの、国もとには家もあり、妻子もあって、ゴム紐や歯ブラシを押し売りして歩くやっこの類とは比べらるべきものではありません。しかし、いずれもあやしげなこのあたりの言葉を使って来ることが、なにか、下心のあるような卑しさを感じさせ、そうと富山はあからさまに態度には見せないが、その卑しさにおいて、自分たちは他社者とは違うのだという目で、わたしを見ていることはおなじであります。

時代は明確にしてないけど、電気やバスに言及している部分もあるから、多分戦後から昭和30年代くらいかなと思うけど、場面によっては江戸時代でも通用しそうなストーリー展開だった。富山の薬売りは、いつ頃まで活躍していたのかな。

初真桑

酒田は古くから栄えた日本海沿いの有数な商工業港である。(略)わたしは思わぬ時を過ごして、よく鎧屋(あぶみや)さんに泊めてもらった。本間家が台頭するまでは、酒田はこの鎧屋の飛雄するところで、その繁栄は西鶴の耳にもはいれば、芭蕉も招ばれて共にあるじと遊んでいる。

コロナ禍の影響もあってか、2021年3月に酒田へ旅した時、この鎧屋は現存していたけど改修とかで外から眺めるだけだった。酒田はなかなか心穏やかになれそうな土地柄でよかったけど、あういう場所が過疎化にならない日本であることを希望したいなと。

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