「ルパン、最後の恋」M・ルブラン


初めてのフランス・パリで食べたランチ

20年前のデジカメ、媒体はフロッピーディスク。

ファイルサイズは34KB!!

この写真にちなんで、こちらを紹介したい。

ルパン、最後の恋
モーリス・ルブラン/平岡敦(訳)
(ハヤカワ・ミステリ文庫)

訳者で選ぶ、平岡敦さんだから読む

「訳者あとがき」に

一九四一年になくなってから七十年目にして、ルパン・シリーズの未発表作品が出版

とある。ルブランが活躍したのは、日本で言うと昭和初期なのかしら。

個人的にはルパンよりホームズの方がハマるかな。どうしてだろう?

内容は次の16章で構成されている。

  • 1 遺言
  • 2 危うし、七億
  • 3 新事実
  • 4 ゾーヌ・バー
  • 5 ココリコ
  • 6 奇妙な男
  • 7 救出
  • 8 不可能な愛
  • 9 敵の隙を突く
  • 10 ルパンの財産
  • 11 尾行
  • 12 話し合い
  • 13 潰えた陰謀
  • 14 罠にかかる
  • 15 対決
  • 16 女が望むもの

正直、全体的にストーリーよりも作者の美学?構成?を意識し過ぎている気がする。

カーベットは、ルパンと思われる主人公と中盤戦を繰り広げる相手なのだけど、

カーベットは馬丁と娼婦のあいだに生まれた、卑しい素性の男だった。そんな出自だからして、上流人士のあいだでアウトローとして悪事を追いかけまわすのは、さぞかし居心地が悪かったろう。

せっかくなら(大人の読者であれば)、こういうダークな人間をこの程度の描写で終わらせるのではなく、もっと掘り下げて欲しいと思った。

「本当に驚くべき人ね、あなたは。どんなことにも備えていて、何でもできるお金があって!」

そして、ヒロインに言わせるセリフもやや陳腐かなと。

「わたしはアルセーヌ・ルパン……そしてきみはイギリス諜報部の高官だ」

ついでに、ヒーロのセリフも大人の読み物?にしては軽い。

「わたしの組織が、どんなに胸躍る戦いに関わっているか、知ってもらえさえすれば……」
「胸躍るかもしれないが、美しさに欠けている」

ルパンのセリフはむろん後者だけど、ここでは是非「胸躍る戦い」とは「美しさ」とは何ぞやと追求して欲しかった。

ついつい不満が並んだけど、話題性とは裏腹にやっぱり物足りなかったのである(失礼)。どうしてルパンよりホームズの方が読み応えあるのかなあ… と漠然と思っていると、

主人公が泥棒であるということ

という指摘に納得した。善悪の問題ではなく、推理小説やミステリーで、主人公が探偵ではなく泥棒であることは、作者にとっては結構難しい素材なのではと思ったりする。

wikipedia からの引用だけど

ルパン生誕100周年を機に、訳者平岡敦が同年フランスで刊行されたルパン全集を底本に早川書房のハヤカワ・ミステリ文庫から新訳を刊行。2005年8月、『カリオストロ伯爵夫人』から、刊行開始。当初は、ルパンシリーズ全21作を、1年に2冊、10年計画で刊行予定で、完訳の文庫版としては最新訳であり、シリーズ全作を網羅する予定であった事から、初の文庫版完訳完全全集になることが期待されていたのだが、順調に刊行されたのは、2005年9月『怪盗紳士ルパン』、2006年5月『奇岩城』までで、4冊目となる『水晶の栓』の刊行は2007年2月にずれ込み、5冊目として『ルパン、最後の恋』が2013年5月に刊行されたが、それ以後の刊行予定はなく全訳計画は中絶された。

フム。

計画が頓挫したのは、訳者の気力が尽きたのか、出版社の経営上の理由なのかは不明だけど… 個人的には少し気になる。やっぱり、魅力を表現するのは(やや)難しい気がするのである。

訳者の平岡氏も気になる存在で、以前このような座談会を聴きに行ったこともある!

明美女史は、大学の同窓会報で紹介されてもいたので、今後もこの辺の分野にはアンテナを巡らせておきたい。

「オペラ座の怪人」のようなフランス作品は大好きなので、是非これからもフレンチ・ミステリーをどしどし紹介して欲しい!

この1冊でした