「本郷菊富士ホテル」近藤富枝


周囲のマンションからは富士山が見えるのだろうか?

思うことがあって(ピアノのお稽古の前に)文京区の本郷を徘徊してます。

大正、昭和の文豪などの著名人が投宿していたホテルと名乗る下宿「菊富士ホテル」の跡地です。菊坂にある富士山が見えるホテルということで、菊富士。ネーミングは自分好みだな。

もはや周囲はマンションだらけだから、富士山は見えない。マンションの部屋からなら、見れるのかもしれない。諸々ある本郷は、自分の思い出もある。

この写真にちなんで、こちらを紹介したい。
本郷菊富士ホテル近藤富枝(中公文庫)

儲けより経営者家族のロマンが形になった場所

だったのかと、個人的には本を読んで思ってます。

経営者夫婦は田舎(岐阜)から一旗揚げるべく、目的もないまま上京しますが、目をつけたのが本郷で下宿を開くこと。加賀百万石の跡地に東京大学ができたが、大学のある街という雰囲気だと(少し)アメリカのボストンと似てるかも。

東京帝国大学は明治十八年に誕生している。その前身は大学南校(江戸時代の蕃書取調所)、大学東校(もとの医学校)などで、これらの学校が明治九年に旧前田邸跡の現位置(本郷七丁目)に移ってきたものだ。

そして、長女(しず)の言葉です。

他人の建物があるのに、地主が他所を第三者へ売ってしまうことです。父の建てた菊富士楼も、地主の長泉寺さんが地所を売ってしまったので、買主から、のけ、のけとうるさく言われるようになり、涙をのんで父は明け渡しました。幸いに別館の地所と地つづきの土地を買うことができて、菊富士ホテルの構想が父の頭から生まれたのです

やっぱり、土地との縁は大切!そこからドラマは始まる。

しずは一番母親似で、その人妻としての余裕がこのころは、はからざる色気ともなり、この遠来の客たちの吸引力となったのだろう。

商売には看板娘も重要。店員なり経営者が魅力的な店は、自分も魅力を感じる。

経営者のやり手ぶりの記述は多くなく、以降、著書は多くの有名人の逸話が並ぶ。それはそれで読み応えあって豆知識も増えたものの、現在、本郷の魅力?を分析中?なので、参考図書の感覚で読んでみました。

自分は杉並区(荻窪、中央線沿い)が好きだから、文京区に住むことはないけど、妙に時代の残り香が残っている雰囲気は永遠に気になる。

この1冊でした

本郷菊富士ホテル (中公文庫 (こ21-1))

 

本郷菊富士ホテル (中公文庫 (こ21-1))