「海底二万里」ヴェルヌ(新潮文庫)

毛嫌いしていたつもりはなく、手に取ることがなかったのはご縁がなかっただけ。夏休みの課題図書ではないけど、大人になって読めばまた違う味わいがあるに違いない!とヴェルヌ作品を読んでみた。

なお訳者は村松潔氏、新潮クレスト・ブックスでの翻訳が多く英訳の方かなと思ってwikipediaをみると英仏文学とある。なるほど、仏文もお得意なのか!と改めて頼もしく思う。この方の翻訳もの、自分にとっては気になる方だけに、手にした理由の一つでもある。

文庫概要

タイトル海底二万里(上・下)
著者ヴェルヌ
訳者村松潔
出版社新潮文庫
この写真にちなんで、こちらの文庫を紹介したい。

内容紹介

上下巻、ともに400ページ近いけど、昔の文庫本に比べれば活字も大きいし、何より多分訳者の方の努力で随分読みやすくなっている(と思われる)。その結果、分量の割にはサクサク読める。個人的いは字面が詰まっているのが好みだけど。

加えて、発刊当時の版画も掲載されてて、それを眺めるとダイビングのような潜水服やら潜水艦の先進性にはやっぱり驚いてしまう。

分量が多いのは、ヴェルヌ作品の特徴かもしれない。ディテールにマニアックっぽいこだわりがあり、その描写が多くて長い。つまり、海底が舞台なこの作品だと、海の生物とか船関係とか。一方、ストーリーは割とシンプルで一本調子、登場人物も多くなく妙な伏線もないので、やっぱり読みやすい。

上巻第一部

  1. 逃げる岩礁
  2. 賛否両論
  3. 旦那様のお気に召すママに
  4. ネッド・ランド
  5. 行きあたりばったり
  6. 全速力で
  7. 新種のクジラ
  8. 動中の動
  9. ネッド・ランドの怒り
  10. 海の人間
  11. すべては電気で
  12. いくつかの数字
  13. 黒い川
  14. 招待状
  15. 海底平野を散歩する
  16. 海底の森
  17. 太平洋の海面下を四000里
  18. ヴァニコロ島
  19. トレス海峡
  20. 陸上での数日
  21. ネモ船長の電撃
  22. 病的な眠り
  23. サンゴの王国

下巻第二部

  1. インド洋
  2. ネモ船長からのあらたな提案
  3. 一〇〇〇万フランの真珠
  4. 紅海
  5. アラビアン・トンネル
  6. ギリシャの島々
  7. 四十八時間で地中海横断
  8. ビーゴ湾
  9. 失われた大陸
  10. 海底の炭田
  11. サルガッソー海
  12. ハクジラとヒゲクジラ
  13. 棚氷
  14. 南極
  15. 事故かトラブルか
  16. 空気が足りない
  17. ホーン岬からアマゾンへ
  18. 大ダコ
  19. メキシコ湾流
  20. 北緯四十七度二四分、西軽一七度二十八分
  21. 大虐殺
  22. ネモ船長の最後の言葉
  23. 結末

10 海の人間

狂言回しであり主人公のフランス人であるアロナクス博士とその忠実一辺倒の使用人コンセイユ、カナダ人のネッド・ランドに、ネモ船長と訳あり?っぽい人物を中心に海底二万里で物語は展開する。

「海がお好きなんですね、船長」
「そう、好きです!わたしには海がすべてです。海は地球の一〇分の七をおおっており、その息吹は純粋で、健康的です。(略)ああ!博士、海のふところで生きることです!そこにしか自立はありえない!そこには支配者は存在しない!そこならば、わたしは自由になれるんです!」

ここまでは前座ぽく、登場人物の説明なりお膳立てを整え、ストーリーはここ10.以降から展開を始める感じ。前半は世界を股に掛けたアドベンチャー仕様で、冒険にワクワクしたい子供たちなら、純粋に読むのが楽しい部分。ゲームもいいけど、是非文章を読んで読解力や想像力を養って欲しいなと、大人になった自分は、未来の大人へ期待したい。

以下、一気に結末に向かうけど、上巻に比べ下巻は少し悲観色が現れてくる。果たして結末は、この悲観色を払拭するハッピーエンドなのか、その色を深めて余韻を残すのか…。

22 ネモ船長の最後の言葉

(略)ノーチラス号に乗りこんでからのあらゆる記憶が、エイブラハム・リンカーン号から私が姿を消して以来の、あらゆる楽しいあるいは不幸な出来事がものすごい速さで脳裏を駈け抜けていった。

続いて、上巻から下巻までに繰り広げられたアドベンチャーを総括してくれている。

海底での狩り、トレス海峡、パプア・ニューギニアの原住民、座礁、サンゴの墓場、スエズの海底トンネル、サントリーニ島、クレタ島の潜水夫、ビーゴ湾、アトランティス、棚氷、南極点、氷の中に閉じこめられたこと、大ダコとの戦い、メキシコ湾流の大嵐、ヴァンユール号、そして、乗組員もろとも沈められたあの軍艦の恐ろしい光景!……

ネタばらしをするつもりはないが、著者はどうしてこの結末を選んだのかな?という疑問が自分の感想。それを差し引いても、この作品が発表された1870年という時代を日本で考えると明治3年、その先進性はやっぱり西洋!なんだなと改めて痛感してしまった。

この1冊でした(Amazon)