「ブラック・ダリア」J・エルロイ


身近にあったアメリカンな光景

以前はしばしば出かけた海外も、パスポート切れ次回の予定はなしですが、道を歩けばそれっぽいお店や雰囲気は気になります。

この写真にちなんで、こちらを紹介したい。
ブラック・ダリアジェイムズ・エルロイ(文春文庫)

暗い情念に取り憑かれるとどうなってしまうの?

切れ味鋭い短編も好きだが、漬物石のように重い長編も好きです。

ジェイムズ・エルロイケネディ暗殺にまつわる「アメリカン・タブロイド」、そして今回は映画もみた「ブラック・ダリア」を読みました。じっくりエルロイも読もうかなと。

1947年に発生した実際の事件をモチーフにしているようで、映画でも解決に至った記憶はなかったのですが、小説では二転三転した意外な結末が…。

いい奴が実は悪い奴だったと知って、私は恐ろしかったのだ。

怖い基調はまずここ↑です。

そして例えば、訪問先にあった「剥製のスパニエル犬」、

「(略)ダディはそのとき拳銃の掃除をしていて、そこへバルトーが新聞をくわえてはいってきたわけ。ダディはそのひとときを永遠に記念にしたくて、バルトーを撃った(略)」

愛犬バルトーを剥製にして、めでたい話の記念にするというようなエピソードが積み上がる。

腐敗したロスアンゼルス警察と言うが、警察だけでなく、弱肉強食で自分の身は自分で守る、立身出世を夢に善悪を無視して突っ走るのは、とてもアメリカンらしい!と楽しめました。

訳(やく)が悪い訳(わけ)ではなく、翻訳だし、文を読ませる小説ではないので、自分に刺さった引用は少ないけれど、原タイトルの意味と一緒にアメリカン・ノワールなエルロイの世界を一応全部読みたいと思っています。

あの手のこの手で相手の協力を求めたり、駆け引きする。

私は転属願いを引き裂いて、再びサーカスに加わるために引きかえした。

主人公はそうして二転三転と何か(小説では結末)に向かって、サーカスに参加し続けるのでした。それでも文庫で600ページ近いし、登場人物は少なくないし、カタカナの名前だしで、ストーリーから取り残されないよう連日かなりハマって読みましたが、どこまでもどこまでも人間の暗い情念に引っ張られました。

以下、「アメリカ文学界の狂犬」エルロイ・ワールドです。

「暗黒のL.A.」4部作

アンダーワールドU.S.A.シリーズ」3部作

映画はこれ!

youtu.be

2006年に公開され(わりと)リアルタイムで観て、エルロイの名前を知った。今ではもう忘れられつつある1作なのかな。

スカーレット・ヨハンソンとかヒラリー・スワンクの存在が新鮮にも感じたのだけど。

この1冊でした

ブラック・ダリア (文春文庫)

 

ブラック・ダリア (文春文庫)