「夏服を着た女たち」アーウィン・ショー


こちらのツイートに興奮している。

夏服の女たちを撮り貯めたいが取り急ぎこちらで

ホワイトドレス&白い日傘の女性たちの写真があったのだが、あいにく消してしまったようだった。しかし、あれは後ろ姿だったから見られたもので、正面は女性だったけどルール違反でしょう… と言いたくなるようなおばさまたちだった(失礼)。

こちらは正真正銘若い女性である写真にした。

今回紹介の小説は「若くてきれいな女性」がテーマなので、こちらの画像の方がまだ相応しいと思う。

夏服を着た女たち
アーウィン・ショー(講談社文庫)

やっぱり人間模様を描くには絶好な舞台のニューヨーク

むろんアーウィン・ショーの力量によるものかもしれないが、自分はこの世界?に魅了されて訳す常盤新平の訳も捨てがたいのではと推測する。原著を読んでいないので… 推測。

そういう自分、20年ほどむかし銀行行員生活から逃げるように夏のニューヨークへ渡って住み始めたので、いろいろ振り返る思い出もあり、この小説もしょっちゅう読み返している。どれも20ページ前後の短編なのだが、自分にとって切れ味鋭い短編小説の指針でもある。

  • 夏服を着た女たち
  • 街をさがし歩いて
  • 80ヤード独走
  • ニューヨークへようこそ
  • 未来に流す涙
  • モニュメント
  • 街の喧騒
  • アメリカ思想の主潮
  • ストロベリー・アイスクリーム・ソーダ
  • 愁いを含んで、ほのかに甘く

どれが良い・悪いはないが、やっぱり「夏服を着た女たち」がしみじみくる。初めて読んだ20代後半ではわかったようなわかってないようなだったけど、40も後半になってくると、男の気持ちに同情してしまったりもする。

「ほんとうにあなたは幸福な結婚をしたの?」
「そうだよ」とマイクルは言い、日曜日の朝がそっくり彼の内部で鉛のように沈んでいくのを感じた。「ところで、こんな話をしてもしようがないじゃないか?」

この一節がこの短編の明暗を示している。男と女の気持ちは噛み合っていない。

そして夫であるマイクルは言う。

「(略)僕はこの街でピクニックでもしているような気分なんだ。劇場で女たちの近くにすわるのが、僕は好きだ。支度してそれらしく思えるまでに六時間もかける有名な美女たちさ。それから、フットボールの試合を見にくる、ほっぺたを赤くした若い女たち。そして、陽気がよくなると、夏服を着た女たち。」

夏服を着た女たちは、夫の妄想に登場するだけで、実は夏の小説ではない。浮気の話でもあるのだが….

マイクルは彼女が歩いていくのをじっと見ながら、なんてかわいらしい女だろう、なんて素敵な脚だろうと思った。

最後の一文であるが、結局は自分の妻もかわくて仕方がないのである。齢を重ね、ますますこういう短編を自分は好きになる。

久しぶりにこの小説を思い出させてもらったことに感謝して、読みたい本はいろいろあるのに、ショー&常盤新平の作品群を読み返そうかと思っている。

この1冊でした

夏服を着た女たち (講談社文庫)

 

夏服を着た女たち (講談社文庫)