「旅屋おかえり」原田マハ

愛媛県の松山市

2020年「#文庫の会」交換会でやってきた1冊はこちら

テーマは「旅」

本のタイトル旅屋おかえり
著者名原田マハ
出版社集英社文庫
この写真にちなんで、こちらの文庫を紹介したい。

読みながら萬鉄壁社長はマキタスポーツさんをイメージしていた

ざざっとあらすじを述べるとすると、

萬鉄壁社長が経営する芸能プロダクションの唯一の芸能人・丘えりか(本名、岡林恵理子)は自分の凡ミスでスポンサー離脱により旅番組が打ち切りとなる。仕事を失ったプロダクションは、妙な成り行きから、依頼人に代わって旅をする「旅屋」を開業、そして大きな案件は萬鉄壁社長の過去と関連があり、その結果はいかに?

というものだった。

まず、ネーミングが秀逸だった。
主人公の芸名は「丘えりか」だけど、略して「おかえり」って、旅ネタと絡めて何気ない出来事の描写が膨らむ。そして、そんな彼女を見つけ、育てる事務所の所長(社長?)の名前が、「萬鉄壁(よろずてつぺき)」というのも渋い。

もちろん、この社長は後々大きなスートーリを引っ張る重要な役割をも担っている。その辺のストーリー作りも言うに及ばず秀逸っす。

12章で構成。

出だしはわりと普通な感じだった。北海道の田舎から海を越えて来るとき、

 東京に出てきさえすれば、こんなふうに、男の人たちにちやほやされて生きていけるのかな。
 そう思ったら、いっそう不安になった。

ところどころ、笑いを引き起こしそうなギャグも微笑ましいし、微妙な固有名詞も魅力的である。

「デビュー曲は『ひとりぼっちのスキャット』。セカンド・シングルは『アイ・ラブ・ユーは真夜中に』。その次は『夕日に投げキッス』……」

最初は青森や秋田の角館と東北から始まり、最後の舞台は愛媛県の内子町(うちこちょう)。いいところだった(一度行ったことがある)のに、写真がなかったのが無念。

松山空港から松山駅までバスで移動し、松山駅からこうして電車に揺られている。窓の向こうに流れるのどかな風景を眺めても、ちっとも心が浮き立たない。いつもなら、駅弁を広げたり、その地域に生まれてた作家の文庫本に目を通したりして、これから旅する先に思いを馳せる。いちばん楽しく、心沸き立つ時間のはずなのに。

著者もきっと旅をこういう風に捉えているんだろうな。いいな、この一文で自分は旅への思いを掻き立てられる。

鉄壁社長と真理子さんに起こった、美歌ちゃんを巡る悲しいできごと。決して塗り替えることのできないふたりの過去を、私は知ってしまった。

素直に涙が出てしまった。けど!

このストーリーは起(青森)承(秋田・角館)転(最後の依頼へ)結(愛媛県・内子町)と成っているけど、一番面白いのは旅屋をするきっかけになる、秋田・角館だと思う。けど!

全体を通して、旅の良さ、日本の良さが出て素直に楽しめまする。

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