自然主義の感覚で19世紀末大都会パリのプチブル生態を描くと?(2)

森茉莉女史も意識していたモーパッサン

第一巻には田舎ものに続いて、

パリ生活を扱った都会もの、

本のタイトルモーパッサン短編集Ⅱ
訳者名青柳瑞穂
出版社新潮文庫
この写真にちなんで、こちらの文庫を紹介したい。

行楽地におけるピクニック調の話が多いので、ちょっと行楽っぽい画像で。天気が冴えず、ちょっと陰気くさいのがお恥ずかしい…。

時代は1880〜1890年だから明治初期

令和を生きる自分たちからすれば、明治初期はもはやかなり昔になるけど、わりに現代の感覚でも違和感なしで読める。しかし、訳者である青柳瑞穂氏が名前は女性風だが明治男子(ピアニスト青柳いづみこ女史の祖父)なので、訳がちょっと… 明治っぽいかも。とくに女性の言葉遣いに違和感があるかも。

ラインナップは下記のとおり。

  • あな(Le trou)
  • 蠅(Mouche)
  • ポールの恋人(La femme de Paul)
  • 春に寄す(Au printemps)
  • 首かざり(La parure)
  • 野あそび(Une partie de campagne)
  • 勲章(Decore!)
  • クリスマスの夜(Nuit de Noel)
  • 宝石(Les bijoux)
  • かるはずみ(Imprudence)
  • 父親(Le pere)
  • シモンのとうちゃん(Le papa de Simon)
  • 夫の復讐(Le vengeur)
  • 肖像画(Un portrait)
  • 墓場の女(Les tombales)
  • メヌエット(Menuet)
  • マドモワゼル・ペルル(Mademoiselle Perle)
  • オルタンス女王(La reine Hortenes)
  • 待ちこがれ(L’attente)
  • 泥棒(Le voleur)
  • 馬に乗って(A cheval)
  • 家庭(En famille)

ポールの恋人(La femme de Paul)

というのは、ここの場所では、あたり一面、ふんぷんたる臭気が鼻をつくからである。世の中のありとあらゆる蠢虫の臭い、あらゆる種類の獄道の臭い、パリの社会の黴の臭いだ。闇屋、へぼ役者、下っ端のジャーナリスト、禁治産者の貴族、いかがわしい相場師、放蕩に身をくずした老人、(以下、略)

と、怪しい人物像が続くけど、要するに彼らがこの巻で主に描かれる対象となっている。

田舎にいる怪しい人物と、都会にいる怪しい人物って、単純に想像してみても少し質が違うなと。

詳細は省くけど、次の2作のオチは秀逸だった。救いがあるとかないではなく、人間描写の極みだなと。

  • 肖像画(Un portrait)
  • 墓場の女(Les tombales)

墓場の女(Les tombales)

いつの時代にも独身で自由気ままに生きている人はいるようで(自分も!)

(略)およそ完全にパリ生活を生きている男である。(略)なにしろ、まだ四十そこそこという、世の中がおもしろくてしかたない年ごろなんだから。

しかし、この話はそこが焦点ではなく、この人物は狂言回し。舞台が墓場って言うとこに時代性が出ているからオチは秀逸になるんだな。

家庭(En famille)

本筋とは関係の乏しい描写だけど、モーパッサンの観察力が冴えているのか、訳者青柳瑞穂氏の想像力が冴えているのか…

車内に残っているのは、滑稽な化粧をこらした、脂肪ぶとりの婦人たち、自分らに欠けている品位を、時はずれの威厳で埋めあわせしようとする、あの郊外地のブルジョワ女である。

こういう人種が、この都会ものでの人間模様を彩っているということで。

田舎もののオチも厳しいものがあったけど、都会もののオチは「強かさ」を感じさせられる。モーパッサンの作品は、救いがないものは救いがなく、いかにも現実そのまんまなんだ… というオチが自然主義文学者と呼ばれる所以らしい。納得。

最後の第三巻は戦争ものと怪奇もの!

この1冊でした(Amazon)

このような編集本、ちくま文庫のラインナップが気になりまする。