「オリヴァー・ツイスト」19世紀ロンドンにおける醜いアヒルの子物語かな?

画像は2009年のロンドン旅行で撮影したものだが、それを最後に海外へ行っていない。自分のなかでイギリスの実感が薄れつつある感覚を小説を読むことで補えるかな?

先月の「二都物語」に続けて、ディケンズの長編を読んだ。

本のタイトルオリヴァー・ツイスト
著者名C・ディケンズ
出版社新潮文庫
この写真にちなんで、こちらの文庫を紹介したい。

種明かしにもなってしまうが、貧しい孤児が実は…貧しい人ではなかった!というよくある展開だけど、その一発逆転?までの過程を楽しみたいパターンのはずが、そうでもないのがこの作品の不思議だったかも。

この作品でディケンズがえがきたかったものは?

先日読了した「二都物語」と比較すると捉え所がなかったものの、いつもの自分と異なり結末を知らずに読み続けたから、割と次の展開が気になって読了を迎えた。

以前から気になっていたG・K・チェスタトン(1874-1936)が解説を寄せていたのだが、チェスタトンはディケンズ(1812-1870)の評伝でも有名らしい。お互いの生きた時代はちょうど入れ替わりな感じだろうか。そして、1907年の解説の最後で次のように締め括っている。

フランスの民衆は、無邪気に正義を要求する虐げられた人々だった。彼らは、無邪気にお代わりを要求する教区の少年だったのだ。

「二都物語」が書かれたように、フランス革命はディケンズにとって大きな興味だったのかなと、そして、後半の無邪気にお代わりを要求するのは、主人公のオリヴァーで、この行動からストーリーは始まった。

「51 おわりに」とついた章をいれ、51章から成っている。文庫本700ページに及ぶ長編で、なかなかオリヴァーの人生は好転せず、読者の自分はこの物語の結末はどうなるか?と思った。案の定、「訳者あとがぎ」でも

かねて指摘されているように、作品全体の構成にはいびつなところもある。子供の待遇をめぐる社会批判で始まった話が、進むにつれて大人の犯罪小説、恋愛小説になるし、大団円に持っていくプロットもやや強引だ。それに何より、”教区の少年の成長”の物語であるはずなのに、当のオリヴァーは一向に成長せず、後半ではむしろ主役の座からとおざかあっている。

と書かれていた。が!それで面白くないのであれば、未だ読み続けられている訳はない。そのあたりに、時代を経て読み継がれる作品の底力があるなと。

この長編で、一番自分の印象に残ったのは、巨悪な犯罪者サイクスの情婦として、オリヴァーに同情を寄せるナンシーの存在だった。そのナンシーは、あの子(オリヴァー)に対して次のようなセリフを吐いて… 彼女の運命はいかに?

「眼のまえからあの子がいなくなって、最悪なことが終わったとわかればうれしい。近くにあの子がいると耐えられないの。あの子を見るだけで、自分にも、あんたたちにも背いてしまう」

「二都物語」のカートンという地味な男と同じ立ち位置だと思った。そこにディケンズの特徴を読み取ったよ!

あれこれ理屈を考えず、歌舞伎と同じように人の心の動きを意識しながら読めばいいと思った。

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