チェーホフ短編「かわいい女」からロシア文学読み始め

ソ連時代から怖くて?落ち着かない国だと思っているけど、ロシア文学には憧れる。義務感ではなく、チェーホフも常々読んでみたいと思っていた。

本のタイトルかわいい女・犬を連れた奥さん
著者名A・チェーホフ
訳者名小笠原豊樹
出版社新潮文庫
この写真にちなんで、こちらの文庫を紹介したい。

「かわいい女」とは、ある女の典型をよく捉えているなと女の自分は関心した。こういうのを描くのが、小説なんだと思った。

短編でも重量級なのがロシアだなと

ロシア文学に興味あるけど、重量級だったり難解そうだったりでタイミングをつかみ損ねていたと思う。ロシア文学と言えば、「戦争と平和」とか「カラマーゾフの兄弟」とかとか… でも、本当はいろいろたくさんあるのが、やっぱりロシア。かつてリストラで失業保険もらっていたころ、暇で「戦争と平和」を読んだところ、かなり楽しく読めた。

戯曲作家として有名なチェーホフの短編集、タイトル作品はやっぱり読んでおきたい!ということで、ラインナップはこちら。

  • 中二階のある家
  • イオーヌイチ
  • 往診中の出来事
  • かわいい女
  • 犬を連れた奥さん
  • 谷間
  • いいなずけ

今回のチェーホフ作品は、「金持ちだけど、満たされてない」「自分のおかれた環境に盲目的になる」という、ことをシチュエーションを変えて描かれていると思った。これらは作品が書かれた当時(日本だと幕末から明治初期?)のロシアにおける一般的な話なのだろうか?

往診中の出来事

莫大な財産の相続者の立場にある女性が、精神的に参っているところに、医師である語り部が往診する。肉体的に病んでるところはないけど、その精神的に参っている根源に思いを巡らす。

同様に、大金持にむかって、なんのためにそんなにたくさんの金を持っているのか、なぜ財産の使い方がそんなに下手なのか、それが自分の不幸の源だと分っているのになぜ捨てないのか、とはなかなか言いにくい。そんな話を始めれば、話はきまって照れくさい、間のわるい、長たらしいものになるのである。

そこには、搾取される側と搾取する側のおかれた環境、人間関係、そして人間性などを医師らしく明解に分析する。読者として驚いたのは、この患者が狂人かと思えばそうでなく、外部にいて客観的に判断できる医師が患者の人間性を見抜き、患者は医師に自分の思いを打ち明けることで、少し癒されるということだった。

フム、短編だけど奥が深い。

それより、物事を客観的に判断できなくなり、盲目的に全てを受け入れてしまう底の浅さは、現代でも通じることだと思った。「かわいい女」は、何でも盲目的に受け入れてしまう女性の悲哀を描いている。

犬を連れた奥さん

しばしばタイトルを耳にする有名な作品だけど、自分はありり好きになれなかった。

全くの無為の生活、だれかに見られはしないかとびくびくあたりを見ながらする白昼のキス、そして暑さ、海の匂い、絶えず目先にちらついている着飾り飽食した無為の人々、それらのものがグーロフを別人に変えたように思われた。

語り部でもあるグーロフのキャラクターを自分は好ましく思えなかったのが、原因かなと。

(前略)グーロフにとって重要なこと、面白いこと、必要なこと、自己を欺かずに誠実でいられるようなこと、生活の核心をなすようなことはすべて他人には秘密に進行する一方、グーロフの嘘や、真実を隠すための隠れ蓑、たとえば銀行の仕事や、クラブでの議論や、あの「低級な人種」という言葉や、細君同伴の宴会など、それらはすべて公然の側にあった。

いつの世の中でも、ポリシーのない不倫をして誰も幸せにしない男の典型かなと、救い難さを感じた。

それにしても… むかし(昭和?)の訳は一文が長く少し作品世界に浸り辛い。文句ばかりで、失礼しました。

この1冊でした(Amazon)

このような編集本、ちくま文庫のラインナップが気になりまする。