「アンクル・トリス交遊録」柳原良平

昭和に物心ついた人なら覚えているかトリスおじさん、生みの親の1冊。

カバー画 柳原良平
カバー画 柳原良平

昭和生まれの自分にとっては、まあまあ見慣れたイラストレーターであって、その割には作者のことをあまり知らなかったりする。という意味では、少なくない発見のある1冊に出会えた喜びと驚き!

文庫概要

開高作品を読み直している今、読まずにはいられない1冊であった。

タイトルアンクル・トリス交遊録
著者柳原良平
出版社旺文社文庫
この写真にちなんで、こちらの文庫を紹介したい。

この方と壽屋の開高健氏や山口瞳氏の著書を併せて楽しみたいなと。

内容紹介

知っている人は知り過ぎているネタであるが、サントリーがまだ寿屋といっていた昭和の戦後、開高氏とともに宣伝部で寿屋のお酒の知名度アップに貢献したイラストレーターでもある。

そんな背景を念頭に読むと、戦後復興期の上昇する世相も感じられる。

  • アンクル・トリス奮戦記 9作品
  • アンクル・トリス外伝 6作品
  • アンクル・トリス交友録 7作品
  • アンクル・トリス広告学 5作品
  • あとがき
  • 再版に際して

「再版に際して」によれば、これは昭和51年に大和出版からの単行本を文庫本として再版したものらしい。旺文社文庫でよくあるパターンだが、自分は結構これが楽しくて旺文社文庫を買い集めてしまっている。

アンクル・トリス奮戦記「「洋酒天国」」より

前半はどうしても開高氏との協業話が多い。

ここで触れている向井町の社宅の次に移り住んだご近所の家が、今は「開高健記念文庫」として残っているようだ。行ってみなければ、と勝手な使命感を抱いている。

私は大田区の東急池上線「御嶽山」駅から10分の、開高クンは杉並区向井町の社宅へ住むことになる。

アンクル・トリス外伝「ローモンドと屋台バー」

「歩く影たち」開高健著書の『フロリダに帰る』でも登場するナベ氏。その生きざまも含めて、開高氏にも柳原氏にもよほど印象的だったのだなと思う。

屋台バーのナベちゃん
(略)ごくありきたりの屋台だが屋根ウラに洋酒の瓶をずらりぶら下げているのが面白い。

アンクル・トリス交友録「小説とさしえのコンビ」

個人的にはこういう話題が好きだ。

なんといっても山口サンとのコンビが一番多く、付合いも長いが、ほかの作家の中にも比較的つながりの濃い人が二、三ある。

そして、オチもいい。

サントリーの新聞広告ではずっと長い間棒組みを組んでいながら開高クンの小説の方ではあまり付合いがない。彼の小説の内容が重いので、私の絵とは合わないのである。かといって彼とぴったりの挿画のコンビがいるかと思うとそうでもない、あるいは絵のいらない文章なのかもしれない。(略)開高クンとはそのうち彼にタルタランのような空想ホラ小説でも書かせてそれで絵を付合いたいと思っているが、彼は「わしはまだそんな齢やない、隠居するころになったらやったる」と話していた。

アンクル・トリス広告学「広告主と広告制作会社」

クリエーターとして切実な叫びだと思う。

資金を供出しているというパワー関係もあるかもだけど、口であれこれ言うのは簡単だからね。

一年なり、二年なり、広告制作会社と契約したら、その間はいっさい作品に関して批判はしないという風にできないものだろうか。(略)契約期間がすんで思わしくないと思ったら次から断ってくれればいいのである。もっとも私たちの経験から希望として最低三年間は私たちの好き勝手にまかしてもらいたいものである。

この1冊でした(Amazon)

絶版の文庫本なので、代わりにご紹介。壽屋以外の分野では、かなりの船気狂いだったようで、そちらの作品群も気になってくるなと。