「地底旅行」ヴェルヌ

3作品目のヴェルヌ作品、旅はロマンを掻き立てられるけど… 閉所は怖いかも。

アシェット社リーヴル・ドゥ・ボッシュ版より

積読の山において、自ら進んで手にとるほどの興味はなかったが、巡り合わせの機会に出くわしたら読みたいと思っていた作家である。

文庫概要

タイトル地底旅行
著者ジュール・ヴェルヌ
訳者金子博
出版社旺文社文庫
この写真にちなんで、こちらの文庫を紹介したい。

「挿絵 アシェット社リーヴル・ドゥ・ボッシュ版より転載」とあり、表紙もそういうことかなと。

内容紹介

旺文社文庫収録のヴェルヌ作品は下記ととおりで、今のところ2冊読んだ。

  • 十五少年漂流記
  • 八十日間世界一周
  • 海底二万リュー
  • 地底旅行
  • グラント船長の子供たち

訳者は2冊とも、金子博(訳)であった。

十五少年漂流記

児童文学でも有名な作品なので、大雑把なストーリーはぼんやり知っていたけど、今回初めて&初ヴェルヌとして読んだ。

昭和42年の文庫本だったので、カバーのカラー印刷にズレがあったり、裁断が微妙に斜めになっていたり… と新しい発見があった。という余談はさておき、私好みのページにびっしり文字が詰まって、200ページほどの作品で12章仕立てだった。

一応、十五少年いるようだが、ストーリーを動かしてゆくのは3?4人で、それに各々取り巻きや弟や従兄弟がいたりの人物構成になっているので、誰がどのキャラだったかなと迷うこともなく読み通せた。解説などでも言及されている通り、有名な作品なのでタイトルやぼんやりしたストーリーを知っている人は少なくないかもだけど、どうして漂流してしまったのか、結末はどうなるかまで知っている人は多くないのではと。

今回、間違いなく人生で初めて読んで発見も多かったけど、間違いなく面白かった。意外な展開が用意されてて、ヴェルヌ氏はさすが作家だなと改めて感心した。

フランス人のブリアン兄弟とアメリカ人のゴードンを除いて、あとは皆イギリス系の少年だ。

登場人物はちょっとした多国籍軍になっているのは理由があるけど、そこは読んでのお楽しみ。

1888年の作品、日本だと明治21年、夏目漱石の坊ちゃんが明治39年という時代で比較すると、古過ぎないけど新しくもない。ということで、原作には冗長な部分もあるようだけど、そこは訳者の腕の見せ所で、適宜日本人が楽しく読めるよう工夫してくれているようだ。

結末から。

さて、この物語から次のような教訓を汲み取ることができるだろう。そうすることによって、この二年間の休暇が無駄に終わらないように思われるのである。

中編程度の量だけど、結末に向けて盛り上がる仕掛けになっている点が非常に楽しめた。

地底旅行

四十五章の構成で読ませてくれた。

いわゆるポジティブ指向で地底探索をするドイツ人学者の叔父と、狂言回しでややネガティブな甥、出発点のアイスランドで雇われた寡黙だけど非常に役立つガイド3人よる旅物語。

叔父と甥の様子が顕著に読めた部分。甥は狂言回しだから、主観的な発言は甥の心の叫び。

「圧力計はここにある。こいつが一番役に立つ。これがあれば、ほかのものなんかくれてやったっていいようなもんさ。これでもって、深さが測れるし、いつ地球の中心についたかもわかる。こいつがないと、中心を行きすぎちゃって、地球の向こう側に出てしまうかもしれんからな!」
 話にならない陽気さだ。

底を旅するという視点からでは、「海底二万リュー」と「地底旅行」は似ていた。閉所恐怖症というほどではないが、自分も人並みに閉所はあまり好きでないので、両作品とも地球の底でピンチに陥る場面はわりと高速で読み進めた。

ストーリー上絶対に助かる!ということを意識してても、ピンチの状況を想像で体感するのも遠慮したい。

ちなみに「海底二万リュー」は「海底二万里」として新潮文庫の新訳で読んだ。

解説のヴェルヌ作品を総括するような記述を紹介しておく。

ヴェルヌの小説はほとんどすべて、「旅」を軸として展開していると言っていい。ヴェルヌは人間を描ける人でも、描く人でもない。物語を描くのである。面白い物語に読者が期待する新奇なもの、意外なものを、次々と無理なく繰り出すには「旅」は最適の形式である。

できれば「八十日間世界一周」は読んでみたい。

この1冊でした(Amazon)

光文社古典新訳文庫にて取扱いあるのは、心強し。