本1冊写真1枚

one book with a photo

「犯罪小説集」の舞台となる東京日本橋にあった時代の忘れ物

速達用のポストの存在に初めて気づいた

f:id:yfroot425:20191205213113j:plain
日本橋近くの茅場町・速達用ポスト

谷崎が生まれ育った東京都中央区日本橋、再開発が進行しているけど、よくよく見ると懐かしいものが残っていたりする。

この写真にちなんで、こちらを紹介したい。
犯罪小説集
谷崎潤一郎集英社文庫

試行錯誤の過程を感じさせる作品

自分はわりと谷崎作品を読んでいるけど、これは珍しいと思い手にとってみた。

タイトルに「犯罪」とつくくらいなので、全て犯罪がテーマになっている。

  • 柳湯の事件
  • 途上
  • 白昼鬼語

正直、他の有名な作品と比較すればインパクトは弱いかもしれないが、目の付け所が谷崎らしいと感じた。自分の率直な感想として、大谷崎にとっては犯罪そのものよりも、犯罪者の心理に関心を寄せていたのではと思った。

柳湯の事件

オチも全体的にも今ひとつですが、戦前ののどかな雰囲気を感じられたかなと。

ここで僕は、僕の異常な性癖の一端を白状しなければなりませんが、どう云う訳か僕は生来ぬらぬらした物質に触られることが大好きなのです。

途上

これは犯罪小説としては、ストレートに面白く読めた。今の時代に照らすと「ちょっと歩く」という距離が、新橋から日本橋までというのが気になったけど、著者としてはとくにこの距離に注意は払ってないのかなと。別段、ストーリーに影響する状況ではないので。

あり得なさそうで、あり得そうなシチュエーションがよかった。本当に「殺した」ところが、犯罪として成立したかなと。

「(略)或る人が或る人を間接な方法で誰にも知らせずに殺そうとする。(略)」

創意工夫を頑張ってみてる挑戦的な作品だったかなと。

途中でオチもわかってくるのであるが... このある種の開き直りは、現在の犯罪における犯人の言い訳にもなり得るのではないかなと。

「そう殴ったって仕様がないさ、僕はみすみす君の罠に懸ってやったんだ。(略)あとはお互いに笑いながら話をしようよ」

白昼鬼語

こちらが、一番長い作品だった。

最後のオチが読めて?くるまでは、かなりテンション上がったのであるが、結局はお金と暇を持て余した変人に完結してしまうと、物足りなかったかな。本当に現在でも、お金と時間を持て余すとろくなことにならない、と妙なところで納得して(呆れて)しまった。

「ああ有り難う、君の忠告には感謝するが何卒僕の勝手にさせておいてくれたまえ。僕はこの頃、何となく生活に興味がなくなって体を持て余していたところなんだ。(略)今夜のような面白い事件でもなかったら、それこそ却って単調に悩まされて気が違ってしまうだろう」

この1冊でした

谷崎潤一郎犯罪小説集 (集英社文庫)

谷崎潤一郎犯罪小説集 (集英社文庫)