本一冊

すべての積読は一冊の本から始まる

「そこのみにて光り輝く」佐藤泰志

登場人物が庭先で高山植物を育てるのにちなんで


もともとは映画化から気になった作家

 

こちらの作品も映画が気になってて、積んでいた作品であった。主演は綾野剛さんですから...。

 

本のタイトル そこのみにて光輝く
著者名 佐藤泰志
出版社 河出文庫
この写真にちなんで、こちらの文庫を紹介したい。

 

画像は主要な登場人物が庭先で高山植物を育てるのにちなんで。それにしても、ついに読みたい気持ちとタイミングがミートした。

 

まだまだ謎を感じる作家かな

 

佐藤泰志(1949年4月26日~1990年10月10日)をwikipedia で調べてみると、函館出身でなんと、41歳という若さで自らこの世の別れを告げておりました。

 

国分寺市の自宅近くの植木畑で首を吊って自殺

 

1990年10月って、自分も国分寺市に住んでいた時期だから、ひょっとして少しくらい話題を耳にしていたかも。何に悲観したのか、仕方ないことだけど、現在の作品を読んでみたい作家なだけに残念だな。

 

さて内容は、同じ登場人物による2部作。

 

 

ポエティックなタイトルが良い(綾野剛主演の作品にピッタリ!)。

 

第一部 そこのみにて光輝く

 

自然の山からさらってきた高山植物を、朝市や夜店で売るというシチュエーションで

 

 拓児がユリ科のような花のついた青い鉢を置いた。手つきに商売以上のものを感じた。

 

この行動で、拓児という雑っぽい人物の繊細な部分を表現しようとするテクニックがにくい。

 

第二部 滴る陽のしずくにも

 

二部でもね、高山植物を育てる説明は出てくるし、それを踏まえていろんな人物の背景を描いているのがにくい。

 

(略)商売を度外視していた。根づかせるために、骨を折り、丹精をこめていた。それが拓児だったし、それが拓児の中の陽のあたる部分だった。(略)その部分を通して、俺は千夏や、今は死んだ寝たきりだった義父や義母を見ていた。いや、見ていたのは二十代後半だった俺自身と俺を取りまく世界だったのかもしれない。

 

そして二部では、主人公(綾野剛役)の気持ちを先回りする新しい渋い登場人物が出てきて、話を膨らませる。

 

あんたは満たされていないだろう、と別れしなに口にした松本の言葉が甦える。

 

だけどね... 物語は中途半端な幕切れで終わる。

 

陽陰にいるほうも、陽向にいるほうも、どちらも拓児だ。その一方とだけつきあうことはできない。松本のような男なら話は別だ。彼はどちらの側にもいる拓児を見抜いている。今日の彼の応対ぶりでもわかる。

 

作者はこれでよかったのかな?

 

気になると言いつつ、見逃した映画はどうまとまるのか気になるけど、どうしましょう。

 

こちらもどうぞ!

 

海炭市叙景』『そこのみにて光輝く』『オーバー・フェンス』っで「函館3部作」ですと。まあ、このような作品群好きっす。

 

映画化順に並べると

 

海炭市叙景』(1991年12月)
 映画公開:2010年12月18日
 監督:熊切和嘉
 出演者:谷村美月
     加瀬亮
     山中崇
     南果歩
     小林薫

 

そこのみにて光輝く』(1989年3月)
 映画公開:2014年4月19日
 監督:呉美保
 出演者:綾野剛
     池脇千鶴
     菅田将暉
     高橋和也

 

『オーバー・フェンス』(『文學界』1985年5月号に初掲載)
 映画公開:2016年9月17日
 監督:山下敦弘
 出演者:オダギリジョー
     蒼井優
     松田翔太
     満島真之介
     北村有起哉

 


www.youtube.com

 

この一冊でした