本一冊

すべての積読は一冊の本から始まる

「ふらんす物語」永井荷風

隅田川、お江戸のセーヌ川


間違いなく過去にも読んでいるのだけど、内容については全く記憶に残ってない。なぜなら、永井荷風はそれなりに話題に上るので、一つ読んでおこうかというミーハーな気持ちだったせいかと。今回はモーパッサンをある程度読んだ経験を踏まえ、大正期に活躍した文学者はフランス絡みだとモーパッサンを意識するので、自分も何だか少し腹落ちできた気がする。

 

文庫概要

 

タイトル ふらんす物語
著者 永井荷風
出版社 新潮文庫
この写真にちなんで、こちらの文庫を紹介したい。

 

 

 

内容紹介

 

荷風が滞仏した時代を踏まえると… やっぱり荷風は一般的な庶民からして付き合いにくい人生経験を積んでいると思われる。

 

  • 船と車
  • ローン河のほとり
  • 秋のちまた
  • 蛇つかい
  • 晩餐
  • 祭の夜がたり
  • 霧の夜
  • おもかげ
  • 再会
  • ひとり旅
  • 巴里のわかれ
  • 黄昏の地中海
  • ポートセット
  • 新嘉坡(シンガポール)の数時間
  • 西班牙(西班牙)料理
  • 橡の落葉

 

橡(とち)とは、マロニエ
「橡の落葉」には、さらに短い9つの作品が含まれていた。

 

船と車

 

初っ端から、アメリカをネガティブに位置づけ、フランスを特別視している偏見から始まる。個人的にはその点に感想はなく、荷風の性格が窺い知れる事実として興味深く感じる。

 

(略)手革包を提げて広い待合室を通り過ぎる時、草色に塗ってある単純な清酒な壁の色彩が金銀で塗立てる事の好きなアメリカの趣味とは非常な相違であると著しく自分の眼を牽いた。同時に、面白い薄色で、瑞西南欧各地の風景を描いた鉄道会社の広告が、これまた自分の足を引止める(略)

 

 

女性に対しては露骨に描く。確かに、日本人にしては背も高く趣味も育ちも良いから仕方ないと思いつつ。

 

売笑婦どもは早くも貞吉の顔を認めて、妙な色目をつかって呼ぶものもあったが、互に何か云合うらしく、遂には乳搾りのような汚い肥ッちょうの女が大きな口を開いて笑った。

 

「橡の落葉」からの作品「墓詣」

 

そうそう、モーパッサンにあったこの作品。まるで落語のようなストーリーなだけど、ある程度事実は踏まえていると思われる。墓場で誘惑してくる美しい女性にはご注意!ということよ。

 

寂々たるこの周囲に対照して、若き女の美しく、哀れ深きは、さすがに吾をして、礼なく近づきて、道聞く事をためらわしめたりと雖、又同時に、巴里の浮世の計り難きは、墓畔に偽り泣きて物に打れ易き感情家を誘いし女もありしと云う、モオパッサンが小説を思わしめたり。

 

この1冊でした(Amazon

 

 

橋、川、船に男と女、表紙とヘッダ画像の類似性は高い。