本一冊

すべての積読は一冊の本から始まる

「夜は短し歩けよ乙女」森見登美彦

重要な小道具として登場する


たまには現代(流行り)ものも読みたい

 

言うに及ばずだけど、京都大出身で京都ものを描いる作家といえば、万城目学氏を思い出すけど、氏のデビュー作「鴨川ホルモー」はかなり楽しく読んで、以降万城目氏の作品結構読んだ。「とってんぱらりの風太郎」に至っては再読してるし、機会あれば拾い読みもしたいほど。

 

偏見に満ちた期待を持って、森見氏の作品を読んでみたが、氏独特の良さを見出せた(気がする)。

 

本のタイトル 夜は短し歩けよ乙女
著者名 森見登美彦
出版社 角川文庫
この写真にちなんで、こちらの文庫を紹介したい。

 

京都と錦鯉は結びつかないけど、重要な小道具として登場する。

 

各章とも春夏秋冬で季節を意識しつつ読むべし

 

 

第一章 夜は短し歩けよ乙女

 

著者にしてみれば、こちらが書きたくて、この話は始まったのだろうか?

 

締めの文章。

 

冷たく澄んだ空を威張って見上げて、李白さんがお酒を酌み交わしながら言った言葉を思い出しました。(略)
 かくして私は呟いたのです。
 夜は短し、歩けよ乙女。

 

このタイトルにもなっているインパクトあるフレーズ、著者オリジナルかな?と思えば違ったようだ。

 

作品全体に渡って引用からインスパイヤされた話が多く、wikipediaでも次のように紹介されていた。

 

古典文学や近代詩からの引用が多く、タイトルは吉井勇作詞の『ゴンドラの唄』冒頭からとられている。

 

ちなみに、オリジナル作者の吉井勇(1886〜1960)は元華族で、これまた人生においていろいろあった方のようだ。これはこれで興味が湧く。

 

第二章 深海魚たち

 

引用からの発展形がストーリーを引っ張る場面が多いけど、多分、著者自身の感覚で文章が炸裂する箇所も面白い。

 

どこまでも暴走するロマンチック・エンジンをとどめようがなく、やがて私はあまりの恥ずかしさに鼻から血を噴いた。

 

第四章 魔風邪恋風

 

そして錦鯉。決してストーリーにおいて重要な役割をば担っていないものの、サブな登場人物の重要な小道具として第一章と最四章で描かれている。

 

リアルな悩みが押し寄せた。もう飛べない。
 現実の重みに耐えかねて墜落した先は、屋上の古池である。古池や、俺が飛び込む水の音。溺れる私の視界の隅で、紅白の鮮やかな錦鯉が身を翻した。

 

締めの言葉

 

かくして先輩のそばへ歩み寄りながら、私は小さく呟いたのです。
 こうして出逢ったのも、何かの御縁。

 

全体の文章に独特なリズムがあって、これも森見氏の特徴なんだろうなと。ただ引用しているのではなく、感覚的に合致してそこから展開する話がパッチワークのような微妙な連携を保って、氏の世界観を繰り広げていた気がした。

 

どう表現してよいか不明ですが、角川文庫らしい作品だなと。機会があれば、他の作品も読んでみたいけど… 近頃、自分より若い人の作品とは別に、昭和とそれ以前の作品が気になって仕方がない。

 


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映画はアラフィフの今の私にとっては、かなり甘過ぎだった。

この一冊でした