はじめに(画像の説明)
自分のうちでは翻訳家としての岸本佐知子女史のイメージが強いけど、エッセイといいますか、ちょっとした心の叫びやつぶやき?のような文章が読ませる。
以前に読んだ白水Uブックス「気になる部分」というお下げの女の子が表紙の作品と混同していたが、今回はちくま文庫でクラフト・エヴィング商會によるカバーデザインでの仕立てになっている。愛読者も少なくないかな。
少し引用
数ページの作品が50ほどで構成されている。そのうちから、わかりやすいものを少しだけ。
各作品には、クラフト・エヴィング商會によるイラストがあり、これもいい。
夏の逆襲
夏は暑ければ暑いほどいい。個人的には四十度くらいまでなら受け入れる用意がある。(略)自分に優しく地球に厳しい私だ。
他人にも甘く、自分にはもっと甘い自分と通じるものを感じた。
西太后の玉
頭の中で、とある映画の冒頭、死んだ西太后の口の中に大きな玉をカポッと押し込むシーンが思い出される。そういうことだろうか。
自分はタイトルを見ただけで、あ!っと思った。自分も初めてあの映画をみたとき(多分15〜16歳)、むかしの中国の権力者は、死ぬと何故に黒い玉を入れるのか?と思っていた。なお、そんな自分の素朴な疑問の解が書かれているわけではないので、あしからず。
しかし、もっとも(自分にとって)衝撃だったのは、「文庫版あとがき」に
「べぼや橋」のその後だが、小学校の一年先輩でいらっしゃる坪内祐三さんが、「ああべぼや橋ね、もちろん知ってるよ」と証言してくださったので、ひとまず存在が証明された恰好になった。ただし先輩は「佐知子のことも、もちろん俺はあの頃から知っていたぜ」などとおっしゃるので、やや眉唾であるのだが。
これはツボちゃん(自分はただの一読者でしかないものの、慣れ慣れしいまでに自分にとっては、そういう存在の方)という人のことを存じないと響かない部分であるが、知っている人には小さくない驚きと、岸本佐知子作品の本質がうかがえる部分であると思った。
この一冊でした
まだまだ翻訳作品も、出会いがあえばエッセイも読みたいと積んであります。