本1冊写真1枚

one book with a photo

星野道夫氏の作品は忘れていた何かを思い出させてくれる

トーテムポールに思いを寄せていた人がいた

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カナダ土産のトーテムポール

一度でいいから星野氏が言及するような本物?を見てみたい。

この写真にちなんで、こちらを紹介したい。
旅をする木
星野道夫
(文春文庫)

ドキドキ交換会で我が家にやってきた1冊です(感謝)!

いくつか既読?感があったので、いろんな雑誌の特集などで読んだことがあったかも。だけど、改めてこうしてまとめて読むと星野道夫ワールドが確認できる!

AD(Art Director)として三村淳氏のお名前がクレジットされていたけど、三村漢ちゃんのパパなのね。

微妙に色彩が異なるエッセイ集より

Ⅰ~Ⅲの各パートにいくつかのエッセイがまとめられている。タイトルはこれらエッセイの一つから引用したのかと。

タイトルは銘打ってないけど、1993~1994年に綴った書下ろしかな。現在ならブログに語る近況に近い感じ。

詩人ぽく、うっとりする。良い悪いではなく、季節に明暗がある暗い冬を自分は嫌いではない。

「北国の秋」

秋は、こんなに美しいのに、なぜか人の気持ちを焦らせます。短い極北の夏があっという間に過ぎ去ってしまったからでしょうか。それとも、長く暗い冬がもうすぐそこまで来ているからでしょうか。

こちらは主に「母の友」という雑誌に掲載したものを加筆したようだ。アラスカでの生活、アラスカとどこか接点のある暮らしぶりを語っていた。

3編おさめられているけど、古書店の話が印象深く残った。古書店は、ある意味新刊書店より奥行きを与えてくれるので好きだ。

「海流」

古本屋オブザーバトリイは、時代ものの座り心地の良いソファーが本棚に囲まれるように真ん中にあり、どこか人の家の居間のような暖かさがあった。別に本を買わなくても、その長椅子に座って読んでいれば良いのである。ディイはむしろそんな客を好んでさえいた。

一部「母の友」の掲載だけど、主として書下ろし。長年にわたるアラスカでの生活を踏まえた、読み応えのあるエッセイ集だった。

星野氏のわかりやすいところは、まずこれから語りたい対象が提示され、何故にそれを語るかが説明されていることだと思った。

自分もこれまでトーテムポールを不思議に感じていたので、同じように思う人がいて嬉しくなった。

「トーテムポールを捜して」

…トーテムポールに刻まれた不思議な模様は、遠い彼らの祖先と伝説の記憶である。が、それは後世まで残る石の文化ではなく、歳月の中で消えてゆく木の文化であった。

このⅢでは、何度か言葉を変え人を変えアラスカとの運命的な出合いを語っていた。

「アラスカとの出合い」

人生はからくりに満ちている。日々の暮らしの中で、無数の人々とすれ違いながら、私たちは出会うことがない。その根源的な悲しみは、言いかえれば、人と人とが出会う限りない不思議さに通じている。

それと、現在の日本社会で私たちはすっかり実感することもなくなった自然との関わりを、実体験を通じて語っていたのも印象に残った。

カリブーのスープ」

私たちが生きてゆくということは、誰を犠牲にして自分自身が生きのびるのかという、終りのない日々の選択である。生命体の本質とは、他社を殺して食べることにあるからだ。近代社会の中では見えにくいその約束を、最もストレートに受けとめなければならないのが狩猟民である。約束とは、言いかえれば血の匂いであり、悲しみという言葉に置きかえてもよい。そして、その悲しみの中から生まれたものが古代からの神話なのだろう。

星野氏自身は、残念にも熊に襲われ世を去ってしまったけれど、言葉や写真として残ったものに彼の思いが感じられるのは幸せなことだなと。

この1冊でした

旅をする木 (文春文庫)

旅をする木 (文春文庫)