本一冊

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エッセイ集3冊:芥川也寸志

芥川也寸志3冊


コレクション化している旺文社文庫の紹介

 

私の愛する旺文社文庫で1980年代に出版された3冊が(偶然にも)揃ったので、まとめて紹介してしまう。

 

決して古書コレクターではないけど、個人的に愛着ある旺文社だから見過ごせない。

 

本のタイトル(3冊) 音楽を愛する人
音楽の旅ーエッセイ集ー
音楽の遊園地
著者名 芥川也寸志
出版社 旺文社文庫
この写真にちなんで、こちらの文庫を紹介したい。

 

書下ろしではないので内容に重複もある

 

しかし、重複するというのは、著者にしてみればお気に入りのエピソードだなと読者として感じた。

 

音楽を愛する人

 

表紙は安野光雅氏、2020年12月に94歳の大往生でお亡くなり。

 

本の内容の概略として、こう書かれている。

 

バッハから武満徹まで、古今の100名曲をエピソードを交えて紹介する。エスプリ溢れる好エッセイ。

 

こういう(現在であれば新書に多い)100紹介モノは好きで、ちょくちょく目を通しているけど、さすが?文豪の子息の作品なのか、現在よく目にする文章とちょと違う!と思った。

 

 

とっつきにくかったプロコの味わい方を教わった。さすが、芥川先生。

 

ご参考までに、こういう現代的な作品を聞く場合は、できるだけ優秀な演奏で聞こうと心掛けることが絶対に必要です。(略)時々水の出にくくなる水洗便所では、快適な近代生活を味わうどころか、見るも無残なものとなってしまいます。プロコフィエフのような近代的な音楽は、いつも勢いよく水の出てくるようなオーケストラでお聞きになるに限ります。

 

 

ブラームスの歌曲って?と思う反面、「体質的に好きではない」という感想もいい。

 

どうも私は体質的に歌曲というものをあまり好きではないらしいのです。(略)誰かが作った歌を平気でうたっていながら、自ら進んで歌を作曲しようという気分も湧いてきません。

 

音楽の旅ーエッセイ集ー

 

カバー画は、安野光雅「歌の絵本」Ⅱより

 

著者と画家のコラボになる段階で、お得感がある!ラインナップは下記のとおり。

 

  • Ⅰ 自伝抄<歌の旅>
  • Ⅱ 出会ったこと 忘れ得ぬこと
  • Ⅲ 音楽への発言

 

以下、少し紹介。

 

  • Ⅰ 自伝抄<歌の旅>

 

父の書斎は大正十三年の十一月に、庭に増築したものだそうだが、ふすまで仕切られた八畳と四畳半で、子供心にも暗い陰気な部屋という印象であった。よく家相などに詳しい方は、ただでさえ悪かった家相が、この書斎の増築で決定的に悪くなったという。事実、この書斎が出来てからは、私の家では不幸が続いた。

 

これが、妙に実感させられた話だった。親族なだけになおらさ説得力があった。

 

  • Ⅱ 出会ったこと 忘れ得ぬこと

 

「最初の海外旅行」では、初めての旅行先であるソ連?での話、ジプシー音楽を直に認めている話がいいなと思った。

 

噂には聞いていたけれども、とにかく彼等の演奏のうまいこと、いわゆるジプシーヴァイオリンがうなり、チンバロンが絶妙な早いパッセージを叩き出す。これを聞くだけでも来てよかったという実感を味わう。

 

音楽の遊園地

 

カバー画・さし絵 長新太

 

ラインナップは以下のとおり。

 

  • 動物受難
  • 女体説
  • 食欲・性欲・創作欲
  • 声のお話
  • ■プロムナード
  • 音楽療法
  • アガル
  • ■プロムナード
  • 映画音楽
  • 国歌のお話
  • ■プロムナード
  • 作曲家という狸
  • 女性にはなぜ大音楽家が生まれないのか
  • ■プロムナード
  • 音楽交際術
  • あとがぎ

 

以下、少し紹介。

 

■プロムナード

 

「悲しき軍楽隊」で、この話は他でも何度か見かけた。

 

軍隊には軍隊一流の、軍隊にしかそれは許されないような、あまりにも的確な人間識別法が存在していたのでないか、そんな気がいまだにしております。

 

軍の音楽隊で楽器を割り振られるのだが、チューバっぽい人にはチューバが、トランペットぽい人にはそれが… というはなし。ちなみに、本人はテナーサックスだとかで、かなり喜んでいた。

 

それにもかかわらず、現実にうまい合唱団と、下手クソな合唱団が出来てくるのです。どうしてでしょう。理由は簡単です。指揮者が違うからです。

 

「コンクールの罪」としては、言い切っている。合唱団は指揮者というより、指導者次第ということらしい。

 

この一冊でした

Amazonから現在でも新刊で入手可能な復刊があればと検索さしたところ、「音楽を愛する人に」がちくま文庫から1990年に復刊されたものの、それすらもう古書扱いになっている。読んでみたいと思う人は、古書か図書館で探すしかないのかも。あしからず。