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自動車愛満載ハードボイルド冒険小説「深夜プラス1」新訳だよ

世界各国昭和の時代の自動車は愛らしい

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イタリア車フィアット「500」(ヌォーヴァ)
Nikon D7200 with 35mm f1.8

どうして以前の自動車はこんなに愛らしかったのだろう。近頃の車に魅力を感じないのは、自分が車を所有していないから?

この写真にちなんで、こちらを紹介したい。
深夜プラス1 新訳版
ギャビン・ライアル 鈴木恵・訳 (ハヤカワ文庫)

フランス車、イギリス車の魅力も楽しめる!

原題は「Midnight Plus One」邦訳そのまんまだね

新訳&旧訳を読み比べていないが、新訳は読みやすかった&わかりやすかった。

旧訳の訳者は菊池光さんで、ハードボイルド系を数多く訳しているようだ。wikipediaには、次のような意見も出ている。

菊池の担当編集者だった戸川安宣は、菊池の前職が通訳だったことにふまえ、「語学を、文字から学ぶ人と、会話から入る人がいますが、菊池さんは後者の代表格でしょう。そして都筑さんは前者の見本のような方でした」と書いている。

過去にこだわりない自分だけど、自分にとって「深夜プラス1」というタイトルは今ひとついただけない。よくわからない。直に「午前零時一分」とかにしても...と思うのだが、こうするとアジア系ハードボイルドになってしまうかな?

ちなみに新訳の鈴木恵さんもハヤカワ・ミステリ文庫を多く訳されているようなので、今後にも期待。自分、結構訳者で読む本を選ぶ。

ストーリーは制限時間までにリヒテンシュタインに行かねばならないお金持ちがいる、だけど命が狙われている... 。そのお金持ちを守ってフランスからリヒテンシュタインまで届けるという単純な筋書きに、第二次世界大戦後の元レジスタンス運動の協力者、銃やら自動車やらメカに怪しいタックスヘイブンなどが絡む。

しかも、このお金持ちに秘書として足手まとい必須の女性も存在している。きっとこの女性が、いい感じで足引っ張るんだろうなと、秘書の言動を(作者の期待どおり)イライラしながら読み進めた。

早速冒頭から、自動車の蘊蓄披露がある。フランス版フォード「シトロエン」で、擬人化している。

シトロエンDSを運転するのは二年ぶりだったし、DSはとてつもなくすぐれた車だが、とてつもなく奇妙な車でもあるからだ。ギアチェンジはマニュアルだが、クラッチがない。(略)この車には人間の体内よりも多くの血管が走っている。そこから出血しはじめたら、じきに死ぬ。

ハードボイルドの香り。

銃や車の蘊蓄の他にも、レジスタンス運動があり、自分好みのラブロマンス(え! そことそこ方がくっつく!?)もあり、ヨーロッパはネタが豊富だと思った。作者はイギリス人なのに、舞台はフランス発スイス経由でリヒテンシュタイン... とイギリスに絡むものは少なく、しかもやや皮肉っている。

だけど、英国人によるこの手の小説は面白く読める。

しかも、後半に物語はどう収束するのか?と余計な心配して読んでいると、真面目に荒唐無稽な展開となり、登場する自動車はロールス・ロイスとなった! やっぱりイギリスが一番かい。

荒唐無稽のヘッドである将軍、この老人は敵か? 味方か?

またしても沈黙があった。やがて将軍が言った。「おれみたいな年寄りを脅したってむだだぞ。そのみち老い先短いんだ。明日にもぽっくりいくかもしれん。失うものはろくにない」

ロールス・ロイスファントムって、好みのネーミングだなと思った。最上級モデルらしい。

「父が総督時代にファントムⅡを公用車に持っていたから、ファントムⅡで運転を習ったの。だからわたしが運転したほうがいい」
(略)それに彼女の言うことにも一理ある。いくらわたしが難しくないと言っても、このロールスロイスは三十年以上も前の運転法に合わせて造られている。

そして、足手まといとなって、もしくは犯人の手先か!と疑っていた秘書の女性、最後には運転オタクの主人公の代わりにファントムを運転してしまう。そして... 彼女は誰に惹かれてしまうのか?

バカンスに持ってゆきたいTHE娯楽小説だった。

この1冊でした