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「怒りの葡萄」下巻、辛い環境下における葡萄の結末は?

今週のお題「読書の秋」

葡萄より桃の怒りの方が強いのでは?

生活費にも満たない賃金で葡萄の収穫... 桃の収穫はもっと過酷のようだった。

f:id:yfroot425:20181127234730j:plain Nikon D5300 with 35mm f1.8

自分で言うのも厚かましいが、こちらの写真の方が桃の悲哀?が表現されてないかなと。

この写真にちなんで、こちらを紹介したい。
怒りの葡萄」(下)
スタインベック新潮文庫

大久保康雄氏の旧訳から黒原敏行氏の新訳も気になる

上巻を読んで、葡萄が何を怒っているのか雰囲気はつかめてきたものの、結末はどうなるのだろう?と下巻を読んでみた。

「監獄にはいってるとーー人間は、こう、何というかーー勘が鋭くなるだよ。大勢で、いっしょに話をさせてくれねえだからーー(略)何か事件がもちあがりそうなときにはーー(略)それが、ちゃんとわかっちまうだ。(略)」

そういう勘が鈍くなる職場ってありそうだな... と逆なことを思いつつ、緊張の場面から読み進めた。

「何にもしねえくせに、しょっちゅう、ああしてえ、こうしてえと、そんなことばかり言ってやがる。(略)」

娘を妊娠させて、一緒にカルフォニアへ向かっていた義理息子が、あまりの生活環境の厳しさに耐えられず逃げ出したとき、母より存在感が薄かった父が吐き捨てるように言う。むろん、逃げ出しても環境が向上するわけはないのだが。

いつの時代にも、こういう口だけの人物はいるのだなと、妙なリアリティを醸し出す。

「あの女のことは、わしも知ってる。わしは、あの女には、ちょっと気をつけているんだ。いい人だが、みんなを不幸にするよ」

収容キャンプでようやく腰を据える一家に、難癖をつける女性が寄ってくる。それを、すでにキャンプで暮らす世話役が説明するのだが、いわゆる「ごたごたを起すのが好きな」迷惑な人だけど...  人間関係が希薄になっている現在なら、近寄らなければよいだけ。

って、ここではそういう観点ではなく、人間追い込まれると弱い人間(いい人)から壊れていくなと読み解いてみる。

「(略)男ってものは一区切り一区切りのなかに生活しているのさーー(略)ところが、女はね、おしまいまで一つの流れなんだよ。小川みたいな、渦みたいな、滝みたいなところもあるけんど、やっぱり川なんだよ。ただ流れつづけるのさ。(略)」

住み慣れたオクラホマの土地を捨てた貧農一家が、農産物の収穫という雇われ仕事を求めてカルフォルニアに向かうロードムービーな小説だけど、最後まで生活は楽にならずに結末を迎える(読んでて辛かった)。最後に救いがないわけでもなかった。

正直、唐突な感じも否めない結末、女性の生きることへの精神力の強さが救いだったのかな。

「解説」からの引用

全編が三十章に分れているのであるが、そのうち奇数章は一種の中間章として、物語の筋とは独立に、その物語の背景を成す社会的条件、あるいはその物語を必然ならしめている自然的、地理的諸条件を、短い、極度に圧縮された形で、抽象的に語ることに費やされている。そして筋の発展の叙述は、もっぱら偶数章にゆだねられ、(略)

とある構成上の変化球があるから、辛いながらも、それなりに読み進めることができた。やっぱり長編は読み終えると、ちょっとした達成感がある。

新潮文庫は旧訳で、個人的にはハマり切れなかった気持ちもある。ハヤカワepi文庫から、黒原敏行の翻訳で新訳版があるらしい。

こちらの黒原翻訳を読んで、自分の好みだったので、

こちらも読んでみたいなと。

同じ作品ばかり読んでいたら先に進まない。まあ、人生は長いからいいかなと。

是非上巻の紹介も!

www.1book.jp

この1冊でした

怒りの葡萄 (下巻) (新潮文庫)

怒りの葡萄 (下巻) (新潮文庫)

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