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加賀藩に存在した河師の息子&娘物語・室生犀星「あにいもうと」

お題「好きな作家」

興味は乏しい?気持ちなのに気になる作家が「室生犀星」。
もうしばらく、時間をかけてもう少し読み続けてみようかなと。

山だって海だって河だってドラマになる!

自分、海より山、だけど夏山より冬山か夏の海、そして夏山より川?河?に惹かれる。

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THE 鬼怒川
Nikon COOLPIX P5000

もうちと写真の作品群?にまとまるよう、狙って川を撮ってみたい気持ちが(人知れず)ある。

河師という職業も重要な視点になっているこちらの短編を紹介。

あにいもうと・詩人の別れ
室生犀星講談社文芸文庫

金沢→室生犀星というつながりが気になっている。加賀百万石は懐深いからね!

小説はヒューマンドラマではない

6月にTBSで兄、大泉洋&妹、宮崎あおいでドラマ化されていた(具体的には後ほど)。

テレビドラマなので、ヒューマン系に仕上がっていたが、原作「あにいもうと」は短編で、どちらかと言えばストーリーで読む感じ。自分は室生犀星作品の研究者ではないので、本当のところは不明だけど、この作品で室生氏が描きたかったのは、弱者な女でも秘めている力強さやしたたかさ&(無責任な側面も併せもつ)兄妹愛かなと。無責任な側面の方が強そうだけど。

近藤富枝女史は「ザラザラしていてこの短編に不快感を抱いた」と著書『田端文士村』で言及していた。ということで、人によっては嫌悪感が強い作品かもしれない(自分は興味深く読んだけど)。

妹が兄に自分を卑下して言い返す一説である。

(略)あたしのようにすれッからしになると、みんな男のことわかるわ。男なんてきたないわ、隔れて考えていると汚ないけど、でも何時の間にか平常考えていることをみんな忘れてしまって、警戒するだけしたあとはもう根気のつづかないことがあるものよと言った。

兄は妹に悪態をつきつつも気にかけ、そんな兄の気持ちを知ってか知らないかは不明だが、妹は反発を繰り返す。っと一読ヒューマンドラマ風な展開にも読めるのだが... その辺りが内容として中途半端な気もしている。そして、続編がある。

「続あにいもうと」という続きでこちらも短編なのだが、「あにいもうと」の続編とは言い切れないほど登場人物の関連性は薄い。そして、ここでは兄より兄妹の父の存在が重要にも読める。なぜなら、この父というのは

その眼からのぼる鬼気と相殺のいんさんたる光はどうてい永い間見守れるものでなかった。

という市井鬼の雰囲気を持つ人で、

もとは武士あがりであろうということも手伝って彼は川師のなかで重きをなして了ったのだ。だが赤座平右衛門が恐るべき刑手の酷たらしい仕事で半生を送ったものであることはその八十六の高齢の幕が切って落とされた最後にもまだ何人にもその過去をむき出しにはしなかった。

家族にも秘密にしていた過去があったりする。

この「恐るべき刑手の酷たらしい仕事で半生を送った」人間性に市井鬼を読み取り、それを軸に暴力&血の繋がりを描こうとしたのかな?と推測してしまうが、残念にもちと不完全燃焼という感じが拭えない。

あにいもうと」でも「続あにいもうと」でもこの父・赤座平左衛門は主役ではないので描写は多くない。かつては加賀藩の刑手として死刑の罪人をやりで刺すことを生業としていた人らしく、明治時代になってからはかつての身分を隠して生きていたとのこと。何がすごいかと言えば、多くを語らずとも、やはりそういう仕事をこなしていた人らしく、無言のうちに他人を圧倒する雰囲気を持っていた人で、この妹もんは、どうもこの人の性格をもっともよく引き継いでいたようにも読めることであった。

ここで「川師」という職業を、3Kの荒くれ者が就く仕事で、そんな彼らを束ねるだけの太い神経がある父親で、その父の性格を受け継ぐ妹と人物描写している。どうもこの妹は、室生犀星の虐待養母がモデルらしい。

だけど... 槍なり刀なり名手なのかもしれないが、刑手というのがやっぱり精神衛生上は辛いものを感じる。

この小説は、室生氏の作家生活のうちでも「市井鬼モノ」と言われるものらしい。

市井鬼とは「人の道にはずれた野生の人々」とのことで、1889年(明治22年)生まれである室生犀星の身近には、まだこのような幕末の忘れ物みたいな人たちが存在したと思う。

いつの時代でも、人間の闇は深くて暗い(かも)。現在でも虐待も存在するし... 悲しいかな。

ちなみに「山師」というのは悪い意味も含め、現在でも耳にするが、「川師」とは聞かない。が、ネットで検索してみると、室生犀星の作品のなかで

加賀藩では河師というものがあって、鮎の季節や、鱒の季節には、目の下一尺以上あるものを捕るための、特別な河川の漁師であって、帯刀を許されていた。

という記述もあり、室生氏も河への関心度は高かったのかなと。帯刀が許されるということは、つまりそれなりに槍でも刀で名手ということかなと。

山にも海にも河にもドラマはある、ドラマになる。

テレビドラマはこれ!

むかしから定期的に映画化やテレビドラマになっているようだ。

兄、大泉洋&妹、宮崎あおい、監督が山田洋次氏でプロデューサーが石井ふく子女史だから、いい感じ(大円団)の全員がハッピーになるヒューマンドラマに仕上がっていて、それなりに泣いてしまった。感情浄化した。

1:43:07 だから、全て観れるよう。

youtu.be

こういうドラマ仕立てを「換骨奪胎(かんこつだったい)」というのかも。もちろん、それはそれで全くOK。

この1冊でした

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