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漱石後期3部作第1作「彼岸過迄」雨降る日は何かが起こる?

お題「好きな作家」

ミステリーを読んでいる感覚だった「彼岸過迄

太刀掛秀子女史の漫画「雨の降る日はそばにいて」は「キャンディ♥キャンディ」に負けず劣らず大好きで、何度も読み返しては何度も泣いた...。

雨の日嫌いでないけど、やっぱり悲しくなってしまうものかもしれない。

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梅雨時のアメリカディエゴ
Nikon D7200 with 35mm f1.8

漱石の小説では「雨の日」はダメなのである。何故?

知りたければ、小説を読むしかないかな。

この写真にちなんで、こちらを紹介したい。
彼岸過迄夏目漱石新潮文庫

実話に基づくこの部分、雨は創作か実話か?

まず(wikipedia の力を借り)自分が語るに必要な本書の背景をまとめてしまうと、このような感じ。

修善寺の大患」後初めて書かれた作品。自意識の強い男と、天真なその従妹との恋愛を描く。短編を集めて一つの長編を構成するという手法が具現化されている。後期3部作の第1作である。

ちなみに、集められた短編のタイトルはこちらで、

  • 風呂の後
  • 停留所
  • 報告
  • 雨の降る日
  • 須永の話
  • 松本の話

「自意識の強い男」というのが須永であり、ネタバレしないよう読み応えを感じた内容を紹介したい。

漱石自身、危篤からの帰還後の作品のせいか、人生諸行無常な響きを感じさせる一方、「報告」と「雨の降る日」には意外にもミステリー仕立てな趣を得た。

自分は予備知識なしに読んでいたので、「おお!新しい作風か」と驚き楽しみつつ読んでいくと...

「須永の話」は「自意識の強い男」の告白で少々読むのは辛かった。しかし!この告白が、最後の「松本の話」に深みを持たせる結果だったようにも感じている。

主人公は敬太郎であるが狂言回しの役しか与えられず、小説の中ではさほどの意味を成してない。

先ず須永の五六軒先には日本橋辺の金物屋の隠居の妾がいる。その妾が宮戸座とかへ出る役者を情夫にしている。それを隠居が承知で黙っている。

このような少々下世話な世間描写から、敬太郎の友人である須永が登場し、その須永を経由して敬太郎は(wikipediaで言うところの)「天真なその従妹」と松本へとつながるのだが、須永・従妹・松本と共通点を持つ田口という男に接触するに際して、いろいろ悩む。そのとき、なんと占いに占ってもらうのだが

「(略)占ないには陰陽の理で大きな形が現れるだけだから、実地は各自がその場に望んだ時、その大きな形に合わして考える外ありませんが、まあこうです。(略)」

その占いの結果をベースに「停留所」のいきさつが語られ、ミステリー色が強まる方向へストーリーはスムーズに展開!(と自分は思った)。

「停留所」の謎な?男と女の話だけでも、それなりに楽しく読めたのだが、松本が絡む「雨の降る日」がまた悲哀感たっぷりで小説の醍醐味があった。これは漱石の実体験に基づいていたとのこと。

自分はここまでで、晩年の漱石ワールドに引き込まれた。

この小説のなかでの「雨の降る日」の内容に意味はないかもしれないが、小説世界(醍醐味)として、人生の悲哀を色濃く感じさせてくれたのである。ここまでで満腹気味になったのに、ここから自意識男の告白がダラダラと続き、そして、「松本の話」と新たな展開が続いたのであった。

次の引用は松本自身のことではないが、彼が自分の気持ちを代弁するがのごとく他者の言動を引用したくだり

そうして物の真相は知らぬ内こそ知りたいものだが、いざ知ったとなると、却って知らぬが仏で済ましていた昔が羨ましくって、今の自分を後悔する場合も少なくはない、私の結論なども或はそれに似たものかも知れませんと苦笑して壇を退いた。

「知らぬが仏」であり、年齢重ねた自分も近ごろ面倒なことは「知りたくない」と思うこと増えている。「雨の降る日」の体験を経て、松本も人生にたいして斜に構える姿勢ができてくる。

そして結末、意識高い男「須永」は旅に出る。どうも後期3部作の第2作は、この「須永」らしい性格の人物が主人公として引き継がれるようだが、より人生を拗らせてゆくのだろか?

何となく楽しみ。

それにしても、タイトルは「元日から始めて彼岸過ぎまで書くつもりだったので名づけた」と漱石自身が連載開始時に言及しているらしいが、こういう変な思い入れのない割り切りタイトル自分は好きだ。タイトルは本質?を外さず、それで言って「さっぱり」した感じなのがいい(と思っている)。重いのは、どうしても引いてしまう。

長くなってしまったが、やっぱり漱石を読むといろいろ(考えさせられるというより)感じさせられる。

他にもいろいろ綴っているので、よろしければ...。

www.1book.jp

この1冊でした

彼岸過迄 (新潮文庫)

彼岸過迄 (新潮文庫)

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